『できる日本語 初級』ついに刊行!

 

日本語学校の現場教師が6年という長い年月をかけて作り上げた初級教科書『できる日本語』が先週やっと完成しました。「これまでにない教科書を作りたい」という思いで、大勢の仲間との対話や議論を通して生まれた教科書です。

では、どんな点が新しいのでしょうか。いくつかのポイントをあげてみましょう。

1.言語的知識よりも「何ができるか」を大切にしています。その思いが『できる日本語』というタイトルの誕生につながりました。もちろん言語的知識もしっかり学べるように工夫されています。

2.各課に行動目標が明記されています。まず場面・状況を示すイラストがあり、「この場面で、この状況で、どう言うのだろう?」と、学習者はまずチャレンジしてみます。つまり、「文型先行型」ではなく、「タスク先行型」教科書です。

3.初級から「固まりで話すこと」を大切にしています。一般的に初級の教科書は、1文または羅列文でのやり取りで終わっていることが多いのですが、「ある固まりで話す」ことを目指して作られています。これが「対話力」を養うことにもつながっていきます。

4.この教科書は、「自分のこと/自分の考えを伝える力」「伝え合う・語り合う日本語力」を身につけることを目的としています。つまり、「対話力」に重きを置き、人とつながる力を養うことができる教科書であると言えます。

長い年月をかけて教科書を作り上げていく過程には、山もあれば谷もありました。でも、いつも侃侃諤々意見を言い合う良き仲間が集い、同じ目標に向かって進んでいったからこそ完成できたのです。では、この教科書はどうやって生まれたのでしょうか?

■現場で生まれ、現場で育てられた、学習者と現場教師のための教科書
日本語学校という教育現場で働く教師によって生まれました。「どうやったら学習者は楽しく、効果的に学びながら、コミュニケーション力をつけることができるのだろうか」ということを常に考え、話し合いを重ねてきました。『できる日本語』は、こうした作成者同士、作成者と使用した教師との対話や議論、そして学習者との対話の中で熟成されていきました。

■「できる日本語教材開発プロジェクト」とアルク、凡人社の協働による教科書
日本語学校の教師と、アルクと凡人社という2つの出版社の協働によって生まれました。
「出版社2社との協働で生まれた」ということを説明すると、多くの方から「それって、出来あがった原稿を一緒に編集したっていうことでしょう?」と質問が返ってきます。
実は、この教科書は6年前のスタート時から著者も出版社のスタッフもみんなで一緒に議論をし、「日本語教育に新風を吹き込む。そのために新しい教科書を作る」という熱い思いで歩んできたのです。

「では、中身ですが……」と、ここで説明を始めたいところですが、「百聞は一見にしかず」、まずは一度手に取ってご覧ください。「なぜこれまでにない新しい教科書なのか」がよくお分かりいただけることと思います。

どうぞご意見、ご質問がありましたら、いつでもご連絡ください。 

                  kazushimada2010@gmail.com(嶋田和子)

 

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『できる日本語 初級』ついに刊行! への2件のフィードバック

  1. 森 万里子(風の会) のコメント:

    日本語学校で教えはじめて半年ですが、初級、初中級を定番の『みんなの日本語』を使用し、文型中心で教えています。教科書で教えるのであって、教科書を教えるのではないということは承知しているのですが、『みんなの日本語』は各課の例文の場面が統一されていない点と、練習Bの構成が今一つということで、正直言って、私としては生意気なようですが、あまり好きな教材ではありません。タスク中心の授業展開を考えるとなるといつも、本当に産みの苦しみと言っては大げさですが、苦労しています。モノトーンになりがちなクラスをできるだけ楽しい雰囲気ににもっていくために何かいいアイデアはないものかと試行錯誤の日々です。
    嶋田先生の『できる日本語 初級』、とても楽しみです。凡人社で拝見してみたいと思います。
    今後ともよろしくお願いいたします。
    森 万里子

  2. 嶋田和子 のコメント:

    森さん
    『できる日本語』に関心を持ってくださり、ありがとうございます。イーストウエスト日本語学校ではもう3年以上も使っていますが、学習者の発話は以前と比べ、増えました。ぜひ使ってみてください。「風の会」でお見えになる時に、教員室にお立ち寄りください。お待ちしています。

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