日本語の魅力は何と言っても省略の魅力、その代表が世界一短い詩「俳句」です。
毎年1月になるとイーストウエスト日本語学校ではすべてのクラスで句会を行います。まだ日本語を始めたばかりの初級クラスでも5,7,5と数えながら俳句に挑戦です。
今日(23日)は、上級の3クラス合同の句会でした。事前に「俳句とは何か」を学び、1人2句ずつ作って担任教師に提出し、すべての句を打ち込んだシートをもとに今日の句会が始まりました。今年も留学生の生活感溢れる句、ロマンチックな句、故郷の家族を想う句などすばらしい句が勢ぞろい。
風に舞う天(そら)の花びらその名雪(朴州恩)
真っ白い雪をパクさんは「空からの花びら」に見立て、「その名 雪」と止めています。「最後のとめ方がいいね」「天を『そら』って読ませるところがいい」と多くの人が選び、みごと一席となりました。
二席は次の2句でした。
いつの間に雪色染みた母の髪(金美英)
冬の夜マックでバイトやけどした(林芝善)
キムさんは、「白髪が増えてきたお母さん」を想いながら、この句を詠んだのでしょうか。イムさんの句は、バイトでの体験から生まれました。リズミカルな言葉の運びと現実味溢れる17文字に、クラスメートも感心することしきり。怪我をしたり病気になったりした時ほど異国に居ることを辛く、悲しく思うことはないでしょう。思わず「大変だったね」と心の中で話しかけてしまいました。
肉まんとカンコーヒーで年を越す(李相娥)
「留学生の生活って大変でしょ。お正月もあまり変わらないんです。そういうことを言いたかったんです」とイさんは、詠んだ時の思いを語ってくれました。日本中が「お正月」「三が日」とワイワイやっている時に、ひっそりと静まり返った都会の片隅で「さびしい異国でのお正月」を過ごしている留学生がいることを、私たちは忘れてはなりません。
ロシアから来たエカテリナさんは、美術館で見た葛飾北斎の絵からこんな句を詠みました。
窓際にねこまるくなり雪を見る(エカテリナ)
どんな絵だったのでしょう。今度エカテリナさんに教えてもらいたいと思っています。日本画を見ながら俳句作りとは、何とすてきなことでしょう!
鍋食ってこたつに入りハッピーや(金起範)
「ハッピーや」の「や」は切れ字かと思いきや、なんと大阪弁の「ほんまや」の「や」だったのです。な〜るほど、彼は大阪弁を使いたかったのか……と、大阪出身の教師が大阪弁でキムさんの俳句をよみあげました。
実は、キムさんのクラスでは先週ビデオ『のぞみ西へ』を使用し、東京、名古屋、京都、大阪の言葉を勉強しました。その時、キムさんは大阪の言葉に「人と人との関係の親密さ」を感じ取り、すっかり気に入ってしまいました。またキムさんは『お国ことばを知る方言の地図帳CD』で、東北から沖縄まで14の方言で「桃太郎」を愉しむという授業も受けていました。こんなふうに方言学習の成果が俳句にも出てくるとは……。なんとも多様で愉快な「留学生の句会」でした。