留学生が選んだ「今年の漢字」

留学生が選んだ「今年の漢字」 心に残った今年の出来事

 イーストウエスト日本語学校では昨年末、2009年の「今年の漢字」を選びました。留学生にとって大人気は毎年「新」という漢字です。

2009年今年の漢字(撮影すべて筆者)


 今回は「今年の漢字」を選ぶだけではなく、「今年の漢字ベスト5」も発表することにしました。「新」に続く漢字は以下のとおりです。 
 
  1位=新  2位=始  3位=変  4位=夢  5位=初
 
 この5つの漢字には、母国での安定した生活から、慣れない日本での留学生活を選んだ留学生の気持ちがよく現れています。まずは、一位を獲得した「新」のコメントを見てみたいと思います。
 
 【新】 今年は私にとってとても大切な1年でした。今まで生活したことをやめて日本に来る決心をして、新しい生活がひろがっているからです。それで私がえらんだ漢字は“新”ということです。今までの生活を切って(斤)、私の夢のために日本に来て、もっと高いところに向かって(木の上に立つ)行くから “新”をえらびました。
 
 また、「今年の漢字」を選ぶだけではなく、素晴らしいコメントに対して「コメント賞」を贈ることにしています。今年「コメント賞」に選ばれたのは次の5つのコメントです(漢字に続く< >内のフレーズは筆者が付け加えたもの)。
 
 【飛】 <日本で飛躍を!>
 12月末、日本に留学することになって飛び立つ思いで飛行機に乗った。
 4月から午前のクラスになったが、いつも朝寝坊してしまい、飛び起きて学校に飛んできた。時には両親がいないここで飛び回る鳥のように自由な生活を満喫した。でも、学校をさぼったのは反省している。もう留学生活が少ししか残っていないが、有益に過ごして有終の美を飾るつもりだ。
 先生たちに教えてもらったいろんなこととここでの経験を元に勉強し続けて、私の日本語の実力が飛躍できるように頑張ろう!
 
 【再】 <「満年齢の日本」で再び同じ年に!>
 今年7月、日本に来たから、私はまた学生になりました。さらに、韓国では25歳なのに、日本に来たばかりにはまだ誕生日がこなくて、23歳になりました。まるでタイムスリップを利用したみたいで、信じられないくらいうれしかったです。
 もちろん私の生年はかわらないんですが、私にとっては一年をかみさまからもらった気持ちで、こんどこそちゃんとがんばろうと思っています。日本に来てよかったです。

入賞した留学生たち


 【迷】 <迷っても諦めない!>
 今年は私は人生のことで迷っていました。二月に台湾から直接日本の大学院を受けて、失敗した時、がっかりしました。その日の印象は、今もこころに残っています。面接が終わったとき、受からないだろうと思いました。大学院の前の川の側に座って「どうしようか」と思いました。人生に迷っていました。その時、「また、日本に来ようか、どうしようか」迷いました。でも、日本語を諦めたくないし、日本語が上手になりたいと思いました。ですから、日本に来ることにしました。今、自分の人生が前より、よくなっていると思います。これからも、前向きに頑張りつづけます。
 
 【認】 <認めてもらえる力をつけよう!>
 私の今年の漢字は、認めるの「認」です。自分の意見とか、気持ちとか、勉強の成績とかも、皆に自分を認めてもらうことです。
 まず、自分でちゃんと勉強しているという「認」です。私は、できるだけ自分の国の言葉を話さないようにして、たくさん日本語でほかの人と話します。日本語の読解と聴解の能力を高めて、皆に自分の能力を認めてもらって、私の日本語の能力は必ず上がっていきます。
 
 【隣】 <隣国日本の隣のおばさんとの交流>
 私は隣の国である日本に来て、どうして韓国にとって日本は近くても遠い国というのか時間が経つほど分かるようになりました。そして、日本の中で住みたかった三鷹に引っ越しして来て、日本では引っ越しをした時、隣の人になんか小さい物をもってあいさつに行くと言われました。それで、韓国のチヂミを作って勇気を出してもって行った時、喜んでくれたおばさんの顔を忘れられません。あとでおばさんがとてもおいしいお好み焼きを作ってくださって、今もしょっちゅう交流をしながら面倒を掛けています。最後にいつも隣にいてくれると思っていた友人にいろんなことをおろそかにしてしまい、今、関係があまりよくないです。韓国に帰るまでに仲直りして国籍をのりこえた一生の友情を作りつづけたいと思います。

今年の漢字「新」のコメント


 コメント賞はもらえなかったものの、中にはとても興味深い漢字コメントがたくさんありました。いくつかご紹介したいと思います。「今年の漢字コメント」を追いかけながら、留学生の生活・気持ち・夢に思いを馳せてください。
 
 【見】 <いろいろ見た一年>
 今年はいろいろなことを見ることができました。まずは「自分」のこと。去年までは16年間休まず学校に通っていて自分が見られませんでしたが、今年日本に来て、時間がたくさんあって自分をかえりみることができました。考えかたも広がって、自分だけではなく、もっと相手の目で見ることができたり、どうすれば地球人として地球問題を見ればいいかを考えることができました。
 つぎは「日本」です。日本の礼儀や秩序、日本に来る前は見えなかったところを学ぶことができました。そして、なぜ花火を見るのか、桜は日本人に何の意味かなどが分かるようになって、十分良い一年でした。
 
 【笑】 <笑いもイロイロ>
 12月に二級の能力試験に合格して嬉しくて笑いました。その後円高が進んで笑うしかありませんでした。今は、専門学校の学費と引っ越しのお金の心配で笑うしかありません。体にはもう力がありません。でも、12月に一時帰国して母と彼女に会える期待で毎日笑っています。来年は力いっぱい笑いたいです。
 
 【負】 <「負けない!」の「負」>
 「負」の意味はだいたい負担と勝負のような“まける”“おう”みたいなあまり良くない意味を持っていますが、“負ける”に“ない”が付いたら意味は全然違います。今年10月に初めて日本に来て、家族と友達と離れて一人で生活することがさびしく、生活費を稼ぐこともつらくて(今もそうなんですが……)、余裕がなかったことがありました。
 その時に、アルバイトしている店の日本人が(から)“ミナさん、どんなに辛くてもあきらめないで頑張ってください。ぜったい負けないでください”と言われたことがあります。その時にはあまり気にしなかったですが、今は辛い時とか、さびしい時には思い出される言葉になりました。“ない”が付いている“負” の漢字は本当に気に入っています。
 
 【越】 <困難を乗り越えて……>
 今年の私はいろんな困難を自分の力で乗り越えてきました。今、こうして日本で生活しているのも、それを克服して成し遂げた、一番大きな成果のひとつだと言えます。
 だから、私はこれを踏み台としてこれからの人生を精いっぱい楽しく、いっしょうけんめい過ごします。
 
 【忘】 <忘れたい一年、でも忘れられない一年>
 今年はさまざまなことが多かったです。一応会社をやめて日本に来たことはとてもうれしかったが、2009年1年間悲しいこととつらいことがあまりにも多くて、私には悲しくてつらかった時間でした。
 私の人生において一番忘れたい年ながらも、一番忘れられない年になるようです。それで、私の今年の漢字は「忘」です。

 【始】 <台湾の「台」、夢の始まりは日本で……>
 今年の漢字は「始」です。理由は「始」の右に「台」があります。私は「台」湾から参りました。今年、初めて日本で日本語を開「始」しました。それから、私はウサギを飼っています。ウサギは私の娘みたいです。「始」の左は「女」という私の「娘」。ウサギを飼っているのは2年半ですが、今は日本にいるので娘(ウサギ)から離れています。でも、今年から始まった私の新しい生活の体験を楽しみます。夢は日本で「始」まりますから。
 【花】 <「私の花」を咲かせたい!>
 私の今年の漢字は「花」だと思います。夢中で私は花を持っていきました。一歩のとき、一花葉が落ちました。私は、そのきれいな花葉が私の一生だと思いました。花葉は落ちても、きれいな一生を歩きたいです。相田みつをが「自分の花を」と言いました。2009年は私に自分の花を育てるという意味があります。

 『じぶんの花を』(相田みつを著/相田一人監修 文化出版局 2001年発行)

 名もない草も
 実をつける
 いのちいっぱいに
 自分の花を
 咲かせて

 中国や台湾からの留学生は漢字に馴れ親しんでいますが、非漢字圏からの留学生の中には、漢字学習に苦労している人も見られます。でも、覚え方にそれぞれ工夫をこらして頑張っています。漢字全体をイメージでつかんでみたり、部首の意味を覚えて自分自身でストーリーを作ったり……。すっかり漢字が趣味になってしまった学生からは、「先生、『私』っていう字、ありますよね。「のぎ偏」を「女偏」に取り替えると何ていう漢字になると思いますか」などというクイズが飛び出してきたりします。この答えは……。
 
 ※クイズの答え:「あたし」です。彼には、若い女の人が「あたし」というのが最初不思議で仕方がなかったようです。

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