留学生にもっと「ホームステイ」の機会を

留学生たちの大きな楽しみの一つに「日本人の家庭でのホームステイ」があります。イーストウエスト日本語学校では、静岡県にある「焼津国際交流:黒潮」ともう20年近くお付き合いをしていますが、そのきっかけはある留学生の「頼みごと」でした。

「先生、実はぼく去年『日本語ジャーナル』って雑誌を見て、焼津にホームステイに行ったんです。その『焼津のお父さん』からさっき連絡があったんですよ。急にキャンセルが出たんで、参加希望者がいないかって……。先生、急いで参加希望者を探してもらえませんか、明日までに」

ホンさんの「この相談」がコトの始まりでした。今から20年も前には、留学生をホームステイに呼んでくださるご家庭はそれほど多くありませんでした。また、受入れ側の「焼津国際交流:黒潮」も「ホームステイを希望する留学生の募集はどうすればよいのか」と頭を悩ませていたのです。「ホームステイができるなんて、こんなチャンスを活かさないなんて勿体ない!」と、私は「OK! 今すぐ各教室を回るから!」とホンさんに返事をし、休み時間終了とともに階段を駆け上がったのです。

そうして始まった焼津とのお付き合い。ホームステイは、お盆の時期(8月12日~15日)と、お正月(12月31日~1月2日)の2回行われます。これまでにどれだけ多くの留学生が焼津で「日本の家族」を作って帰国したことでしょう。「日本のお父さん・お母さん」たちは韓国に居る子どもが結婚するといえば、仕事を休んで出かけます。マレーシアの娘に子どもが生まれたと聞けば、会いに出かけていきます。「うちにホームステイにきたら、もう私らをお父さん・お母さんって思ってや」と留学生たちに語りかける「焼津の両親」との関係はいつまでも続いていくのです。

今年もまたクジに当たったラッキーな学生たちが焼津に出かけていきました。韓国から来た李周英(イ ジュヨン)さんもその一人です。彼女にとってどんなにホームステイが楽しく有意義だったか、ちょっと感想文を見てみたいと思います。

<李 周英さんの感想文>

他の人から見たらただ3泊4日の焼津ホームステイの日程にしか見えないけれど、この日程の中にどんなに多くの思い出がこもっているか、愛がこもっているか誰も知らないはずだ。
「私は本当に東京で1年過ごしたのか」と思ったぐらい、4日間でいろいろ経験した。もう日本について他の人よりたくさん知っていると思っていたし、日本の食べ物はたいてい食べてみたと思っていたが、たった4日間で私はまだ日本でやってみなかったことがたくさんあることに気づいた。

「焼津の両親」とお寺で記念撮影

ホームステイでよかったこと……。とてもすてきな富士山を見たこと。12月31日に家族みんなそろって紅白歌合戦を見たこと。きれいな海の上に上る日を見て、胸が感動でいっぱいになったこと。お寺に行って鐘をついたこと。神社に行っておみくじで「大吉」が出たこと。またお母さんのお節料理からケーキやゼリーなど本当においしかったし、お母さんの真心と愛がいっぱいこめられていることを感じることができた。

「焼津の両親」と初詣

それでも一番良かったことは、夕方に家族みんなそろってごはんとお酒を飲みながら、話を交わした時間だった。たまには日本で外国人という考えでさびしかったときもあったが、お父さんが話してくれた一言一言には外国人を愛する心が感じられた。国籍も違うし、言葉も違うけれどみんな一つという……。私たちはみんな特別な人ということを。

……(中略)……

学校で国際人について勉強しながら「国際人とは一体何だろう」と思ったが、それはお父さんのような方々ではないかと考えた。本当に一生忘れられない焼津での時間。良い経験ができるようにしてくれて、多くの思い出を胸に銘じることができるようにしてくれたお父さん、お母さん。本当にありがとうございました。今はこの言葉しか言えないです。また遊びに行きます。<1月4日記>

大井天満宮で「焼津の妹」と記念撮影

日本にとって「近くて遠い国」と言われる韓国ですが、もっともっと触れ合い、話し合うことで「近くて親しい国」に生まれ変われるのではないでしょうか。多くの留学生たちが「日本人と話したい。日本人の家庭に行ってみたい」という思いを強く抱いて日本で暮らしています。これからも足が地についた「草の根外交」がどんどん繰り広げられていくことを願っています。「ホームステイなんてちょっと難しい……」という方は、一日のうち数時間お邪魔する「デイ・ビジット」という試みもあります。まずは身近で、気楽に出来ることから始めてみてください。何か「思いがけないすてきな発見」があること、間違いなしです。

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