夢を見ないでください、今をがんばりましょう 「きれいな水を飲みたい」が夢のアフリカの子供だっている

これは、2009年7月にイーストウエスト日本語学校で行われたスピーチコンテスト午前の部の入賞作品です。

投稿者 金庭那(韓国)イーストウエスト日本語学校
2009年8月6日投稿

 「ねえ、ね、ジョンナちゃん。川細君、やっと就職できたって」
 「え? マジで? よかったじゃん。あいつ、時間かけてもやっぱ自分がやりたいことをやるって言って、すごく頑張ってたもんね」
 「ん、だけどなんか、自分の夢のためにそこまで頑張れるなんてすごいよ。あたしなんか、大学入ってからは、夢なんてすっかり忘れちゃったのに・・・・・・」
 「あたしも、そうかも・・・・・・」
 「本当? えっ? ジョンナの夢はなんだったの?」
 「あたしの夢・・・・・・」

スピーチをする金さん

 その時、私は、友達のその質問にこたえることができませんでした。今までいろんな言い訳を作って、夢に向かって大した努力もしたことがなかったから、結局、現実と違うと言って諦めてしまっていたから、口に出すのがちょっとはずかしくて・・・・・・。

 今日は、あの時とは立場を変えて、私から皆さんに質問します。
 「皆さん、皆さんは、夢がありますか。その夢は何ですか?」

 「夢」・・・・・・英語では「ドリーム」、中国語では「メン」、そして韓国語では「クム」。今日私がここでお話ししたいことは、その「夢」について、皆さんに、そして私自身に言いたいことです。

 まだ夏が始まる前のある午後のことです。私は家で、クラスメートのスミンさんお勧めのオリジン弁当ののり弁を食べながら、何気なくつけていたテレビを、見るともなしに見ていました。

 その時テレビでは、アフリカの子ども達の話が流れていたのですが、いつの間にか私は食べるのも忘れて、夢中になって見ていました。それは芸能人がお金を集めて、アフリカに学校を建てる話でした。

 その番組を見た後、自分に、なにか、すごくむかついて、ものすごく腹が立ちました。なぜそんなに腹が立ったのか、それは今でもはっきりとは分かりません。たぶん、今まで「夢を見る」なんてことは当たり前のことだと思っていた自分に対しての怒りだったんじゃないかなと思います。

 その番組の中で、ある芸能人がアフリカの子どもに「夢は何?」と質問しました。その子たちは私とは違って、「先生になりたい」とか、「歌手になりたい」とかじゃなくて、「明日はきれいな水を飲みたい」「ちゃんとしたご飯が食べたい」「学校に行きたい」「言葉を学びたい」。それが「夢」なのです。

 それを聞いて、私は本当にショックでした。それまで私は自分がどれだけぜいたくだったのか、本当には分かっていなかったのです。

 私達は夢を見ることが許されています。それなのに、世の中にはニートになったり、フリーターになったりして、「自分がやりたいことが分からない」という人がたくさんいます。私を含め、多くの人が(世の中の景気が悪いからとか、親が反対するからとか)、いろんな理由をつけて、自分の夢に真剣に向き合うことから逃げているのではないでしょうか。

 現実がどうだろうが、別にいいじゃないですか。理想と現実が違っても、どんなに大きな壁にぶつかっても、他の人にバカにされても、別にいいじゃないですか。

 血のにじむような努力を1回でもしたことがないまま、今目の前のことに一生懸命にならないままで、夢を終わらせたくないです。そのままじゃ、この先の人生を胸を張って堂々と生きていけない気がします。

 そして、何より私は自分がお母さんになった時、子どもに「夢と現実は違うから」とは、言いたくありません。「努力に勝るものは何もないよ」って、教えてあげたいです。

 だから、だから、「夢を見る」のはもうやめましょう。いつか、じゃなくて、今、その夢のために、今をせいいっぱい生きていきましょう。私達にはまだ立派な足が、そして若さがあります。だから夢に堂々と向き合う勇気を持って、今、その夢になりましょう。

 夢を叶えるために、今をがんばりましょう。私も頑張りますので、皆さんもぜひ、あなたの夢が叶うように、頑張ってください。

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