北海道・北見で過ごした「日本の年末・年始」

毎年、イーストウエスト日本語学校では北海道でのホームステイを実施しています。札幌・オホーツク・北見などですが、何しろ希望者が多いため、抽選です。今年もラッキーな学生が3人、喜び勇んで出発しました。彼らが出発する3日前、私はそれぞれのご家庭に「ご挨拶電話」を差し上げました。ミョンジュさんが泊まることになった瀬野さんからは、「待ってます。本当に楽しみです」という温かい言葉とともに、こんなアドバイスも届きました。

「先生、こちらはマイナス18度ですから、そのことを伝えておいてください。みんな楽しみに待っています。防寒だけはしっかりしてきてください。でも、家の中はホントにあったかいですから、大丈夫です」

北海道には、札幌と函館にしか行ったことがない(それも夏と秋のことでした)私は、マイナス20度近い温度をなかなか理解することができません。電話を切ってから、留学生たちと、こんな会話を交わしました。

「寒いでしょうねえ」
「でも、台湾、雪ないから、楽しみ」
「ちゃんと手袋とかマフラーとか忘れないでね」
「私は、ソウルだから雪は大丈夫。だけどマイナス18度はすごいですね」

北見から戻ったミョンジュさんは、たくさんのお土産話といっしょにホストファミリーの瀬野さんからのお手紙とプレゼントを持ってきてくれました。そのお手紙にはこう書いてありました。

     ◇ ◇ ◇           ◇ ◇ ◇

明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願い致します。
昨年より韓国のミョンジュさんが私の家でホームステイをしていますが、とても気の付くやさしい娘さんで、とても楽しい日々を過ごさせていただいています。

北見は寒暖の差が大きく夏は30℃以上、冬は-20℃にもなります。私達の住んでいる家も古く居間以外はとても寒いのです。それが良いのか、いつも寄りそうように同じ部屋に居ることが多いのですよ。料理も色々作ってくださり、韓国を楽しむ事が出来ました。ありがとうございます。
    (中略)
私はこの北のはずれに住んでいますが、ほんの少しでも何か出来ることはないだろうかと思った時、ここの場所でも世界の事を少しでも知ることが出来ることを望み、留学生の受入れをさせていただいている数年間を過ごさせていただいています。

私は無肥料無農薬の野菜を作って楽しんでいます。いつか北海道に来る事がありましたら、北のはずれの北見の方へお立ち寄り下さい。気持ちですが、いただいた物の一つですが、お受け取り下されば、嬉しいです。

◇ ◇ ◇           ◇ ◇ ◇

「ホームステイで特に楽しかったことは何?」という質問に、ミョンジュさんは次のように答えてくれました。

「みんな楽しかったですけど、特に、年末、お正月、みんなでいっしょに過ごしたことです。おしゃべりをしたこと、いっしょに料理を作って食べたり、テレビを見て話したり・・・・・・。そんなことが本当に楽しかったんです。スキーとかカーリングもしました。今度は、夏に行く約束をしました」

留学中にホームステイをして、日本の家族といっしょに過ごす時間を持つ体験が出来る人は、まだまだ僅かです。もっともっと日本社会が国際化していくには、一過性のイベントを華々しくやるだけではなく、こうした「市民の小さな活動」の芽がたくさん出てくることが大切です。

日本人一人一人が、継続性のある「小さな交流活動」を続けていくことで、全国各地に「すてきな国際交流の花」が咲き乱れる社会、そして活気あふれる日本社会に生まれ変わることができるのはないでしょうか。

一人でも多くの方がホストファミリーとなり、留学生を受け入れてくださることを願っています。「泊めるとなると、いろいろ制約があり・・・・・・」という方は、デイビジットという方法もあります。1日の何時間かをご家庭でごいっしょに過ごしてください。そこで蒔かれた「交流の種」がすてきな「国際交流」、いえ「人間交流」の花へとつながっていくのだと思います。

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