和菓子で学ぶ日本文化

お店の前で。

今日は、総合日本語クラスの授業の一環として赤坂にある「とらや赤坂本店」を訪問しました。留学生たちは、日ごろ和菓子を口にする機会はほとんどありませ ん。その和菓子を食べることができ、しかも和菓子についての説明を聞くことができ、さらには実演まで見せていただけるとあって、朝から大張り切り。足取り 軽く、お店の前に着きました。まずはお店にかかっている<右横書き>の暖簾を見た留学生から質問が飛んできました。

留学生「先生、どうして【やらと】って書いてあるんですか。反対から読むと……。あ、そうか。でも、読みにく〜〜い」

そこで、教師は<右横書き>日本語の表記についての歴史(昭和23年の内閣公示により、左横書きに統一されました)を説明し、さらに暖簾の歴史へと話は広がっていきました。

まずはビデオを使っての和菓子の説明です。日本の文化と密接に結びついた和菓子の歴史についての説明を、留学生たちは真剣に聞き入っていました。日本の 風土、生活様式、そして芸術と一緒になって今日まで続いてきた和菓子の歴史ですが、実はその過程には海外との深い関係がありました。それは和菓子の4つの ルーツに明確に表されています(パンフレット「とらや」より)。

第一は、古くから日本人の食生活の基本となった米、粟、稗などを利用して作った餅、団子の類、それに木の実、果物など。

第二は、遣唐使によって飛鳥〜平安時代に、日本にもたらされた唐菓子。

第三は、鎌倉時代〜室町時代に、中国から禅宗の僧侶が伝えた「点心」から転じて菓子になったもの。

第四は、室町時代末から安土桃山時代にかけてポルトガル、スペインとの交易によってもたらされたカステラ、ボーロ、有平糖、金平糖などの南蛮菓子。

実演を見ている留学生たち。

ビデオのあとは、和菓子職人の方による和菓子作りの実演です。今日の作品は、「桜、ひまわり、菊」など四季を表す花や、「りんご・柿」などの果物です。 職人さんの見事な手さばきを食い入るように見ていた留学生たちは、出来上がった作品に歓声をあげていました。その日に書いた留学生の感想文の一部をご紹介 しましょう。

○職人さんの巧みな技に驚きました。それから「あんこ」はみんな同じだと思っていましたが、皮があるの、ないの、そして白いあんこまであり、人の好みもそれぞれだということも知ることができました。

○和菓子は本当においしかったです。深い学問があります。さすが日本の文化代表です。初めて職人さんが現場で和菓子を作るのを見ました。本当にすばらしかったです。

○和菓子は台湾で食べたことがあります。今日初めて和菓子の作り方を見ました。本当に難しいと思いました。ずっといい材料で和菓子を作り続けてきたそうですが、とてもおいしかったです。

左:出来上がった作品。右:分け合いながら、いろいろ試食している留学生たち。

和菓子をいただきながらの「質問タイム」では、いろいろな質問が飛び出しました。

質問1.「花鳥風月って何ですか?」
→「自然」のことです。和菓子は自然の形をもとにして作られるものが多いんです。花の形、鳥や動物、風や波、水、そして月や太陽。和菓子では、こういう自然をお菓子形で表現します。

質問2.「お菓子の色は天然色素ですか?」
→天然のものだけを使っています。例えば黄色は「くちなしの実」を使っています。

質問3.「お菓子の名前は職人さんが付けるんですか?」
→そういう時もあります。社員みんなで考えたり、名前コンテストをやってつけたりすることもあります。

その他、外国人の正社員の数や、仕事の内容についての質問、アジアの国々への出店計画、長い歴史の中での会社経営について、さらには社員の方の給料や休暇システムに関する質問まで出てきました。

留学生も教師もみんなが堪能した「和菓子を愉しむ授業」でしたが、印象に残ったスタッフの方のお話をご紹介して、終わりにすることにします。

■和菓子は「五感の芸術」
視覚=目で楽しむ
聴覚=お菓子の名前を聞いて楽しむ
嗅覚=一緒にいただくお茶の香りを楽しむ
味覚=味わう
触覚=「黒文字」で触れて、その柔らかさを楽しむ

■羊羹は挨拶、特にお詫びの時に役立つ
お土産やお詫びの時には「京菓子」が喜ばれる。特に羊羹に人気がある。それは羊羹は重いので、お詫びの時にこの「重いお菓子」を持っていくことは、「私の気持ちはこんなに重く、相手のことを考えている」ということを表す。

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