津軽三味線に魅了された留学生−小学校の80周年記念式典で演奏

演奏を終えた2人の留学生

秋晴れの土曜日、10月25日に、東京都中野区立・谷戸小学校の創立80周年記念式典が行なわれました。谷戸小学校は、イーストウエスト日本語学校から歩いて5分の所にあり、そのすぐ近くにある地域館「さくら館」での活動を通して、さまざまなお付き合いがあります。

絵手紙や和菓子作りに参加をしたり、「さくら祭り」にブースを出して近所の子ども達と触れあいを持ったり……。そんな活動の中で、毎月2回実施されている「さくら館三味線クラブ」には当校の在校生や卒業生も参加しています。

講師は、小井手久子(澤田勝紅)先生。楽器が大好きな小井手先生は、20年前に三味線の音色に惹かれ、お稽古を始めました。そのうち、さくら館に通う 「是非、三味線を習いたい。あの音が好き!」という小学生のために、三味線クラブを始められたのです。6年経った今では、3年生から5年生までの小学生 10人、お母さん方、そして留学生が一緒になって練習をしています。

これまでも小学生達は小井手先生と一緒にアチコチで演奏をしてきましたが、今年は谷戸小学校の80周年記念式典という晴れがましい舞台での演奏です。当 日、小学生の仲間と一緒に舞台に上がることができた留学生は、韓国人の鄭閏姫(チョン・ユンヒ)さんと、台湾人のエイミーさんです。きれいに着物を着せて もらった2人は、神妙な面持ちで舞台に上がりました。曲は「ジョンガラ節」でした。

80周年記念式典で

終わってユンさんに演奏会に関する感想を話してもらいました。

「こんな式典で津軽三味線を弾くチャンスをもらって、感動しました。日本の式典の様子もよく分かりました。日本留学中にこんな経験が出来るなんて、すごく運が良いですよね。小井手先生に感謝しています。」

次に、「どうして『さくら館三味線教室』に通っているんですか。三味線の魅力は何ですか」という質問を投げかけました。

「私が日本に来て6ヶ月経ちましたが、実は、日本に来る前にソウルで今藤珠美さんという人の三味線教室があったんです。でも、私は会社員だったんで、参 加できませんでした。あの三味線の音が大好きで、一度弾いてみたいとずっと思っていました。それで、ポスターを見た時に迷わず参加しました。

津軽三味線の音って、寂しい感じ、孤独な感じがしますが、でも、どこか前向きな感じがします。それが魅力です。私は、小さい時から楽器が大好きで、将来は、出来たら、日本の専門学校で音響を勉強したいと思っています。」

そして、三味線演奏と同じぐらい嬉しかったのが、素敵な着物を着せてもらえたこと。七夕祭りや盆踊りに浴衣は着たことがありましたが、まだ一度も着物を着たことがありませんでした。チマチョゴリよりずっと着方が複雑なのには驚いたそうです。

翌週、イーストウエストに立ち寄られた小井手先生は、留学生のための三味線教室について、こう語ってくださいました。

「津軽三味線の音が好き、曲を弾きたいと外国の人が思ってくれるのは、本当に嬉しいですね。日本の伝統的なものは、これからもずっと残していきたいし、海外に広がっていってほしいと思っています。

私は京都の出身なので、ぜひ着物文化も伝えていきたいんです。着物の良さを日本の若者も忘れないでほしいし、外国の人にももっともっと知ってもらいたいと思っています。」

留学生に教えることに、日本人とは違う難しさがあるかどうかと聞いた私に、小井手先生がこう答えてくださいました。

「間の感覚が掴みにくいみたいですね。「ジャン、ジャ〜ン」って弾くときの、微妙な間、その解釈が違うというか、難しいんだと思います。」

記念のパンフレット

最後に、台湾から来たエイミーさんが送ってきた「感想メール」を紹介したいと思います。

「80周年祭り」 エイミー

10月25日、東京都中野区立谷戸小学校の80周年祭りでした。

三ヶ月前から中野区にある「さくら館」で隔週一回小井手先生と三味線のお稽古をしています。小学校の80周年祭りに先生と一緒に皆さんの前で演奏しまし た。大変緊張していました。特に、外国人留学生の私達にとって日本の伝統的な楽器を日本人の皆さんの前で演奏できることは夢見る心地がしました。

三味線を始めたきっかけは、沖縄の民謡を聞いたことでした。三味線はただ三弦で、綺麗な音が出るのは不思議だと思いました。

津軽三味線と沖縄の三線とは三つ違う点があると小井手先生から教えていただきました。沖縄の三線はバチを使わないで、指先で奏します。津軽三味線の胴は 猫皮で、沖縄の三線は蛇皮で作られています。津軽三味線の胴の形のほうが大きくて四角形ですが、沖縄の三線は小さい丸形です。

小井手先生と津軽三味線のお稽古を始めた頃は、バチを何回も落としてしまいました。バチを握るのは本当に難しかったです。日本に留学しに来た留学生として津軽三味線の勉強ができたのは、誰よりも幸せだと思います。一生で忘れられない素晴らしい経験です。

小井手先生は特に日本の伝統な的楽器や文化などを大切にしていらっしゃるところに尊敬の念を覚えます。

小井手先生、本当にありがとうございます。

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