イーストウエスト日本語学校では今年も川柳コンテストを行いました。川柳コンテストは、クラス代表句を選ぶのではなく、自由に、個人で参加するシステムです。今年の投句は199句。この中から大勢の教師の選句によって1席、2席、3席が決定しました(夏に行う俳句コンテストは、教師だけではなく、地元のお店の方々、公民館のスタッフなど地域社会を巻き込んでのコンテストです)。では、川柳をご紹介しましょう。
今年の川柳には、日本で留学生活を送っている中で感じたこと、思ったことを素直に表したものが多く見られました。読みながら、思わず微笑んでしまう句が幾つもありました。
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◆第1席 日本人 息の音さえ すいません 金光連(韓国・女性)
「なんで日本人はいつでも「すみません」って言うんですか」という質問をよく受けます。日本人の口からしょっちゅう飛び出す「すみません」という言葉は、外国人にはとても不思議に映るようです。
○ 「すみません」ってきれいな言葉ですねえ。
○ 日本人にとっては、あいさつの言葉なんですよね。
○ あまり使われると、気持ちがぜんぜん入っていない感じがします。
○ 感謝の気持ち、謝りたい時、ちょっと気づいてほしい時などいろいろ使えて便利だと思います。
キムさんも来日してすぐ、日本人が「すみません」を多用することに気づきました。「そのイメージを素直に川柳にしたら、この句が生まれました」と感想を述べてくれました。
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◆第2席 夢の中 ばあちゃんの歌 日本語で?! ナターリャ(ロシア・女性)
ナターリャさんは日本に来て3ヶ月目あたりから、夢の中でお祖母様と日本語で話をしているそうです。表彰後、私たちはこんな会話をしました。
嶋田 「いい句ですねえ。夢でお祖母様が日本語で歌を歌っていらしたの?」
ナターリャ「はい、そうです。私も日本語で歌いますよ」
嶋田 「でもお祖母様はロシア語じゃなくて、日本語で歌っていらしたなんて……」
ナターリャ「不思議ですか?でも、ホントなんです。日本語でいろいろ話もしますよ」
こんな話をしてくれたナターリャさんは、日本での生活を思う存分楽しんでいます。夢も叶い、4月から日本の大学院で言語学を研究することになっています。
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◆第3席 4時間目 きれいな和音 腹ソング 朴恩美(韓国・女性)
イーストウエスト日本語学校の授業は、50分授業で4時間あります。12時からの4時間目ともなると、みんなお腹がぺこぺこになってきます。パクさんに「朝ごはんはちゃんと食べてるの?」と質問したところ、「はい、ちゃんと食べてます」という答えが返ってきました。そして、こんな話をしてくれました。
「朝ごはんは食べてきますけど、4時間目になったら、ぺこぺこです。私のお腹が鳴っても、みんな気がつかない振りをします。私も同じです。これって配慮ですよね。そのことを思い出して、川柳にしました」
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その他の面白い句をいくつかご紹介しましょう。
○ 今は今 未来のことは またあとで
○ 月末に 一番怖い 大家さん
○ 初恋は いろんな国に 一人ずつ
○ 本命の チョコを自分に あげたくない
○ 一年後 空港で母 「君はだれ?」
○ 春になる 天から降る雪 桜だね
○ 日本に来て 1回もないよ 食べ残し