国立国語研の廃止・移管問題 両院可決で流れ変わる

国立国語研廃止は時代に逆行 有志の会結成」という記事を書いてから1か月が経ちました。その間、国立国語研究所の問題には大きな変化がありました。それは、「もう決まったこと」と諦めてしまうのではなく、これからの国語の在り方や日本語教育を真剣に考える人々が手を繋ぎ、活動をしてきた結果生まれたものでした。

2週間という短い期間でしたが、この問題を憂える人々で作った「有志の会」による署名運動では11,695人の署名が集まりました。また、さまざまな人々が政策決定に携わる方々への説明などを積極的に行ってきました。

まだまだ課題は残されているものの、関係者一同今回の国会での決議を「大きな第一歩」と捉え、さらなる努力をしようと気持ちを新たにしています。私が所属する日本語教育学会の尾崎明人会長のメッセージの一部をご紹介したいと思います。
国立国語研究所の廃止・移管に関する報告(日本語教育学会ホームページ「会長からのメッセージ」)

【尾崎会長メッセージ(抜粋)】

このような日本語教育関係者の努力に対して、心ある国会議員が修正案と付帯決議案を取りまとめ、衆参両院で超党派による可決という稀に見る快挙を成し遂げてくれたのです。このような国会議員の方々の尽力のおかげで国立国語研究所の日本語教育部門は守られました。

衆議院の委員会で出席委員全員が賛成の起立をするのを目の当たりにしたときには、日本の政治はまだまだ信頼していいのだという思いで胸が一杯になりました。

参議院の委員会で修正案と付帯決議案が読み上げられるのを聞いていて涙が出そうになりました。日本の将来のために国語(日本語)と日本語教育が大事だと考える国会議員がこんなにいるのだという事実を知った喜びはことばに表せません。

最後に、簡単に「どのように流れが変わったのか」についての現状報告、修正案および付帯決議案をご紹介しておきます。

■衆議院&参議院での審議
3月18日の衆議院文部科学委員会に、修正案と付帯決議案(すべての党が共同で提案した案)が提出され、全会一致で通過しました。翌19日には衆議院本 会議で議決され、さらに参議院に回されました。まさに党を超え、国語・日本語教育を真剣に考える議員の方々の努力による結果でした。
3月30日には文教科学委員会が行われ、修正案および付帯決議案が審議され、全会一致で可決されました。翌31日には参議院本会議においても可決され、 国立国語研究所は2009年10月をもって大学共同利用機関人間文化研究機構に移管されるものの、これまでどおり日本語教育に関わる調査研究や情報提供を 行っていくということが決まったのです。
では、その修正案と付帯決議案をご報告します。

■修正案骨子
「独立行政法人に係る改革を推進するための文部科学省関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案骨子(衆議院、参議院)」について国研に関する部分のみ記すこととします。

(独)国立国語研究所の業務を移管される大学共同利用機関法人人間文化研究機構において、独立行政法人国語研究所法第3条に定めるところにより行われてい た調査研究等の業務が維持・充実されるように必要な規定を加えるとともに、当該業務を担うにふさわしい主体等に関し2年を目途とする検討条項を加える。
※附則には次のような規定を加える。
○国は、国立国語研究所において行われていた国語及び国民の言語生活並びに外国人に対する日本語教育に関する科学的な調査及び研究並びにこれに基づく資料 の作成及びその公表等(以下「国語に関する調査研究等」という)の業務が、人間文化研究機構において引き続き維持され、及び充実されるよう、必要な措置を 講じなければならない。
○国は、国語に関する調査研究等の業務の重要性を踏まえ、当該業務を担う組織、当該業務の在り方について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

■付帯決議案
「独立行政法人に係る改革を推進するための文部科学省関係法律の整備等に関する法律案に対する付帯決議案(参議院)」について国研に関する部分のみ記すこととします。

○独立行政法人国立国語研究所の大学共同利用機関法人人間文化研究機構への移管に当たっては、これまで担ってきた日本語教育研究及び関連する事業等の重要 性にかんがみ、引き続き当該研究や事業等を主体的に担っていくための十分な財源措置及び人的配置を行うものとすること。また、同研究所に、大学共同利用機 関の特性に配慮しつつ、当該研究や事業等を担当する部門を設置し、更なる充実を図るとともに、新たな中期計画にその質の向上を図るための措置を盛り込むこ と。
○移管後の国立国語研究所においても日本語教育データベースの更新、既存の研究開発や研究者ネットワークの継続等に支障を来さないよう、大学共同利用機関の特性に配慮しつつ、研究職にある者を適切に移籍させるとともに、適正な手続に基づき処理すること。
○独立行政法人国立国語研究所が担ってきた国語及び国民の言語生活並びに外国人に対する日本語教育の調査研究の重要性にかんがみ、学術研究の中核機関とし て共同研究の活性化を図るとともに、引き続き、国語政策への貢献と外国人に対する日本語教育の振興という観点からの基盤的な調査研究、必要な研究課題の設 定・実施、その成果の活用が図られるよう努めること。さらに、将来的には国の機関とすることを含めて組織の在り方を抜本的に検討すること。

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