日本語学校に届いた「鎧兜三段飾り」

イーストウエスト日本語学校には、みごとな七段飾りの雛人形があります。これは、近くにある城山ふれあいの家(さくら館)で大正琴を教える伊東さんが、「ウチの雛人形も、毎年たくさんの留学生に見てもらえたら、幸せだから」と学校に寄付してくださったものなのです。

毎年2月も中旬になると、留学生たちが先生と一緒に、ワイワイ言いながら一つ一つ飾っていきます。
「先生、この人形、どこに置きますか。右?左?」
「どうしてこんなにたくさん人形がありますか」
「この花は何ですか」

五月人形を前に。

そして今月もう一つ宝物が増えました。それは、ボランティアグループ「風の会」のメンバーである榎本さんが下さった五月人形です。「イーストウエストには、お雛様はあるけれど、五月人形が・・・」と、息子さんの五月人形を運び込んでくださったのです。

日本人ボランティアの方と留学生の共同作業が始まりました。箱を開ける人、包みをほどく人、毛氈を敷いて人形を飾る人、どの顔も真剣です。しばらくして飾りつけが終わると、みんなじっと、これまで見たこともない鎧兜三段飾りを見詰めていました。

今では滅多に見ることができない三段飾りの五月人形を見て、教師もびっくり。金屏風を後ろに、鎧、兜、弓矢、鯉のぼり、太鼓、扇子と、所狭しと並んでいます。折り目がくっきり付いた緑の毛氈に、この五月人形の年輪を感じさせられます。

端午の節句の由来に関しては諸説ありますが、アジアの国々に脈々と流れてきた「端午の節句」を、それぞれの国が独自の形でこれからも大切にしていきたいものです。

日本では粽や柏餅を食べますが、粽を食べるのは、次のような「3世紀の中国、楚の国でのエピソード」に始まるといわれています。

詩人で政治家だった屈原はとても人望が厚かったのですが、上官の嫉妬により失脚し、川に身を投げてしまいました。しかし、屈原の死を悼む人々は、「せめて遺体が魚に食べられないように」と、粽を作って川に投げ込んだのです。

一方柏餅は、日本生まれのお菓子です。柏の葉は新芽が出るまで古い葉が落ちることなく残っていることから、子孫繁栄という意味で端午の節句で食べられるようになりました。

榎本家からやってきた「五月人形」(以上、筆者撮影)

日本でも祝い方は時代によってさまざまに変わってきましたが、鎌倉時代に入り、「菖蒲」が「尚武」と音が同じであること、菖蒲の葉っぱが剣の形と似ていることなどから男の子のお祝いになったと言われています。

国による祝い方の違い、時代による日本国内での祝い方の違いはあっても、現在日本で行なわれているひな祭り、端午の節句はいつまでも続けていきたい年中 行事です。3月には雛人形を飾り、5月には五月人形を飾ったり鯉のぼりを吊るしたりする習慣は、他の国々には見られません。

その季節になると、大切にしまっておいた人形を「また1年元気に育ってくれた!」と感謝を込めて取り出す瞬間。そして、節句が終わると「また元気で幸せ な1年を過ごしてほしい!」と祈りながら箱にしまっていきます。こんな日本独特の文化をいつまでも大切にしたいものです。

今年初めて「イーストウエストのメンバー」に加わった「榎本家の五月人形」を前にして、留学生と日本の伝統文化やそれぞれの国の文化について話し合いました。五月人形の前での「留学生たちの声」をお聞きください。

【台湾の留学生(女性)】
台湾では男も女も一緒に4月4日にお祝いします。「児童の日」です。私が小さい時は政府からプレゼントがありました。鉛筆とかノートとか、文房具です。でも今は不景気だから・・・。

家で特別な料理は食べませんが、いろんなイベントがあります。

日本の端午の節句は子供の祭りだけど、台湾では大人も子供もみんなの祭りで、端午節って言います。日にちは旧暦だから5月5日じゃないです。その日は、ちまきを食べたり、みんなで一緒に色々楽しみます。それから、船(ドラゴンボートレース)が有名です。
【韓国の留学生(女性)】
韓国でも、5月5日が「子供の日」で、休みの日です。

日本みたいに家の中に人形飾ったりしないで、子どもにおいしいものを食べさせたり、遊園地に連れていって楽しく遊ばせたりして過ごします。もちろん、いろんなイベントをして盛り上がっているお店もたくさんありますけど。

私は、日本はいろんな古いものを守っていて、すごいと思いますよ。節分で豆まきしたり、七夕祭とかも驚きました。

【ロシアの留学生(男性)】
ロシアにはこんな人形を飾る習慣はありません。日本は伝統を大切にする国だと思いました。これも、子供の祭りなんですね。子供が大きくなることを大切にする気持ちもすごいです。

ロシアでは、2月23日に、名前は日本語で分かりませんけど(「国土防衛の日」「祖国防衛の日」などと訳されています)、男の人のお祭りがあります。そ して、3月8日は女の人の祭りです(「国際婦人デー」)。でも、仕事が休みなのでみんなで一緒にご飯を食べたり、遊んだりするだけです。日本みたいに、こ んなふうに人形を飾ったりしません。日本、おもしろい。良いですね!

【タイの留学生(男性)】
タイにも「子どもの日」があります。それは、毎年1月の第二土曜日です。みんなで食べたり、遊んだりします。家で特別な料理を作ったりはしませんけど、 いろんなイベントがあります。首相が仕事をしている所を見学できます。この日は椅子に座ってもいいんです。それから、軍隊の戦車を見ることもできます。

日本は、ひな祭りとか、男の子の祭りとかあっていいですね。この五月人形見てると、真面目な感じで、これを子どもが見たら、「ああ、自分も大人になりたい。がんばろう」って思うかもしれませんね。私は見てそう思いました。いい習慣です。

【中国の留学生(女性)】
中国では端午の節句は、家族や友達みんなで、ちまきを食べたり、いろんな料理をたくさん作って食べます。それからドラゴンレースは有名です。この船に は、昔は女の人は乗れませんでした。何か悪いことが起こるって言われていました。でも、今は女の人もOKです。私は福建省出身ですけど、レースのやり方と かいろんな行事がちょっとずつやり方が地方によって違います。

私は、雛人形は見たことがありますけど、五月人形は初めて見ました。すごいですねえ。ホントびっくりしました!

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