川柳で知る留学生の姿・思い

初めての川柳コンテスト。

今日は、留学生の川柳をご紹介したいと思います。イーストウエスト日本語学校では、初級から俳句や川柳を楽しみながら、日本語学習に励んでいます。毎年 8月から9月にかけて句会を開き、9月下旬の卒業式に表彰をしています。そして、今年から新たに「イーストウエスト留学生川柳コンテスト」を始めました。 俳句のようにクラス代表句を決めるというやり方ではなく、自由参加形式でしたが、なんと200句もの川柳が集まりました。

留学生の作った川柳は、彼らの日本での留学生活を詠んだ良句が多く、教師も選ぶのが大変でした。では、留学生川柳をお楽しみください。

【日本語・日本人】
○日本人に 私が敬語を 教えてる!
是非日本の若い人に聞いてもらいたい川柳です。留学生たちはそれぞれ専門学校や大学に進学していくのですが、そこで知るのは「日本の若者がいかに敬語の 知識がないか」ということです。何年か前、卒業生のAさんがこんな話をしてくれました。「先生、面白いんですね。試験の前になると、日本人が留学生の僕 に、『○○さん、敬語のこと、教えて』と聞きに来るんですから」。この句を作ったキムさんは、アルバイト先で日本人の店員さんが自分に敬語を聞いてきたこ とにびっくりした経験があり、そこから生まれた川柳でした。

○日本人 毎日言うね すみません〜
留学生にとって「すみません」は便利な言葉でもあり、奇怪な言葉でもあります。お礼の気持ちを伝えるかと思えば、お詫びの気持ちも表す言葉、時には話の 切り出しの言葉にもなる「すみません」。彼らには、「なんで日本人はこんなに『すみません』を使うのだろう?」と不思議でならないようです。

○帰ってきた ルームメイトに いらっしゃいませ〜〜〜。
アルバイトで上手な日本語を使おうと必死だった○○さんは、ついつい「ただ今」と帰ってきたルームメートに「お帰り」ではなく「いらっしゃいませ」と 言ってしまいました。そういえば、「宿題忘れないように」という言ったところ、「はい、かしこまりました」という答えが返ってきたことがありました。

入賞した川柳。

【日本での留学生活】
○外国人 どこいけばいい 部屋さがし
ずいぶん良くなった「留学生の部屋さがし」ですが、まだまだ「外国人お断り」という物件もあるようです。もっと門戸を開いてほしいものです。以前は50軒も回って、やっとアパートを見つけることが出来たということもあったと聞きます。

○100円で たべられるもの ヤマザキパン
授業が終わるとランチタイム。しかし、パンと牛乳でおしまいということもあるようです。彼らには、ヤマザキパンは「安くて美味しい」と人気があります。 1個500円もするパンを見て、「どうしてこんなに高いパンがドンドン売れるんだろう?」とびっくりしている留学生もいます。

○円がない これが続くと やせられる
昨年からの円高に留学生たちの悩みも膨らみます。せっかく貯めて留学をしたものの、1年分の生活費は半年分となってしまうのですから、大変です。でも、 留学生たちは明るく前を向いて頑張っています。「まっ、いいか! 食べるの減らせば、ダイエットできるよね」と、笑いながら言ってくれました。

○おもしろい 日本語学校 休み時間
授業では日本語しか使えないとあって、休み時間は「お楽しみタイム」です。それぞれの母語で語りあったり、台湾の人にハングルを教える韓国からの留学生が居たり・・・・・・。本当は休み時間も日本語を使うと、もっと上手になるのですが〜〜〜。

○引っ越したい 大家さんの目 厳しいね
初めて日本で生活を始める留学生にとって「日本人の大家さん」との付き合いは少々大変な面もあるようです。親切で優しい大家さんもたくさんいらっしゃるのですが、中にはうまくコミュニケーションが取れないため誤解が生まれてしまうケースもあるようです。
【その他】
○明日(あした)から 今日も昨日の 明日(あす)だった
万人にとって身につまされる川柳ではないでしょうか。ついつい先延ばしにしてしまう習慣、これは仕事でも勉強でも同じこと。しかし、期間が決められた留学生には、特に「時間の経過」が気になるようです。
Tomorrow never comes.
今日できることは明日に延ばすな。
思い立ったが吉日。

○ヒラリーさん 笑顔の中に 何がある
2月に来日したヒラリー国務長官の「笑顔の外交」はマスコミでもかなり取り上げられました。オバマ大統領と選挙を戦っていた頃のヒラリーさんの厳しい顔つきからは想像ができない笑顔です。留学生たちにもとても印象深かったのでしょう。

「賞状」を手にしたキムさん。

あるクラスでは、授業の中で「クラス川柳大会」を実施したのですが、なかなか面白い川柳の授業になりました。まず選句をし、それぞれが3句を選び、その川柳に合ったペンネームをみんなでワイワイ言いながら考えていったのです。

第一席 溜まりゆく 留学経験 やばい貯金 (円高被害者)
第二席 君の愛 私の作った 物語 (ドラマ好き)
第三席 ああ眠い お腹もすいた 授業中 (貧乏留学生)

それぞれ川柳を引き立てるようなペンネームを決めるまで、さまざまな意見が出されました。たとえば、「円高被害者」というペンネームは、「貧乏学生」→ 「留学生」→「貧乏留学生」などのプロセスを経て、最終的に「円高被害者」に決定しました。そのペンネーム作成の流れについて、担当した森節子講師はこう 語ってくれました。

川柳を引き立てるようなペンネームを考える難しさに、みんな必死で取り組んでいました。その時1人の学生が、「円高被害者」と言ったんですが、周りの学 生がみんな「それだ、それが良い!」と言って、反対する人はいませんでした。おそらく卒業を控えて、この1年を振り返り、円高になったことで起こったいろ んな生活の変化を思い浮かべたのではないでしょうか。

5、7、5のたった17文字で気持ちを表せる川柳や俳句の魅力に取り付かれ、卒業後のメールにさりげなく俳句を添えてくれる留学生もいます。これからも多くの留学生に日本語の魅力を知ってもらいたいものです。

カテゴリー: ワイワイガヤガヤ日本語学校 パーマリンク