2008年9月に「『布巾作り』でお年寄りボランティアと留学生が楽しく交流」という記事を書きました。それは「中野区街角サロン『なでしこ会』」とい うボランティア団体とイーストウエスト日本語学校(東京・中野区)の学生との交流活動の記事ですが、初めてお読みになる方のために、「なでしこ会」につい て少しだけ説明しておきます。
「なでしこ会」のメンバーは、70歳から85歳までのおばあちゃまたちで、毎週みんなで集まって布巾やランチョンマットを作っています。作品がたまると それを販売し、収益を区の国際交流活動や地域の留学生のための支援活動に使っているサークルです。何度かお会いしてお話しする中で、こんな声があがってき ました。
「もっと顔が見える支援がしたいんですよ。ただ寄付をするというのではなく、そこからまた、交流が始まるようなことをしていきたいと思っているんですが、どんなことがあるでしょうか」
「おばあちゃまたちにとっても、留学生にとっても有意義なモノを」と考えた末に生まれたのが、「なでしこ作文コンテスト」。毎年3月の卒業式に表彰することになりました。コンテストの概要は以下の通りです。
○ 応募資格 イーストウエスト日本語学校の学生
○ テーマ 交流活動に関すること
○ 賞金 最優秀賞1人「1万円」、 優秀賞2人「5千円」
○ 長さ 600字〜1200字
○ 締め切り 2009年2月20日(金)
16編の作文の応募がありましたが、どの作品も日本での交流への熱い思いがいっぱいの力作ばかりでした。初級レベルから上級レベルまで、さまざまな留学生がコンテストに挑みました。
その中で、最優秀賞に選ばれたのは、宋錦さん(韓国・女性)の「私の傲慢」でした。
宋さんは、地域交流館「さくら館」で毎月2回行なわれている「さくらんぼ喫茶」にボランティアとして参加していました。そこで初めて接する「日本集団」 を通して感じたこと、思ったことを率直に記しています。また、その活動を通じて障害を持つ人々との触れ合いもあり、そこで「日本・日本人」の新たな面を発 見したと言います。
障害者らに対する人々の自然さ。
小さいことでも大切に考える人々。
外国人という型をなくす人々。
こういう気づきは、やはり実際に一緒に活動し、触れ合う中でこそ生まれるものではないでしょうか。宋さんは、最後にこう書いています。
——「知識ばかりの頭の中で何を解決しようとしていたのか……。私は何を理解しようとしていたのか……。頭の中だけで文化、国、民族を理解しようとして いた私、その日何時間かでかたい私の考えががらがら崩れました。その日は近くて遠い文化、日本、遠く感じられた私の考えを変化させる一日でした」
優秀賞の1つは柳宗勲さん(韓国・男性)の「変化、自分を見詰め直す」でした。彼はたくさんの小さな交流を通して、自分自身が変わっていく様子について 書きました。「親しき仲にも礼儀あり」という言葉を軸に、日本人の友だちの家に行った時のことから日韓文化比較、さらに話を広げ、日本留学生活での自分自 身の成長について語っています。ちょっとしたテレビで見たことからも学び取っている柳さんの姿が見える作文でした。
——いつかテレビで「人と人は関わっている。とんでもなく関わっている。仕事にしても自分がやりたいことだけをすればいいというものではない。押し付け られたことでも、いやなことでも、自分のやり方で遣り通すというのが大人だ」ということを聞いてどきっとしました。まるで「人はみんなと関わっているから 気を付けなければいけないのだ。細かい言い回しも本当は相手の気持ちを考えてこそできるものであり、自分を下げて相手を敬うことによって、角が取れた一人 前の大人として評価されるのだ」と、私にそう言い聞かせているように思えました。
もう1つの優秀賞は余思嘉さん(台湾・女性)の「日本人との交流活動」でした。余さんは谷戸多言語ひろばで活動したこと、焼津ホームステイでの体験を通して感じたこと・思ったことを書きました。そしてさらに「アルバイトも交流のひとつだ」と話を続けています。
——日本でのアルバイトも交流のひとつだと思います。日本人と一緒に働くと、日本人の考え方、やり方や態度などがわかりやすいと、私はそう思います。 今、私はコーヒー店でアルバイトをしています。みんなは親切で、いろいろなことを教えてくれて、日本と台湾のことを話したり、仲良くなってよかったです。 日本人との交流活動は本当に大切だと思います。学校の勉強だけではなく、バイトといろんな活動を通して、日本語の学習はもっと楽しくなって、会話能力も早 く上達します。日本人の友達もできるし、教科書以外の日本ももっと理解できて、すごく良い勉強の方法だと思います。
本当は、もっと詳しくご紹介したいのですが、ここではほんの一部だけの紹介に留めておきます。入賞した留学生達は、いま、「ぜひ自分たちの作文をJANJANに投稿しよう!」と話し合っています。近いうちに3つの作文がJANJANに載ることを願っています。
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