「外国人による日本語弁論大会」を聞いて(NHK教育TV、7月17日)

記念撮影

記念撮影

17日夜NHKで放送された「第52回外国人による日本語弁論大会」は、とても興味深いものでした。12人の出場者を4人ずつ、1.震災の体験を語る、2.日本語の面白さと難しさを語る、3.遭うって面白い! 母国と日本の文化の違いについて語る、と3つのグループに分けて紹介されました。ここで、何人かの出場者のメッセージをお伝えします。

 

毎年行われている日本語弁論大会ですが、いつもと大きく違った点があります。それは、東日本大震災のことを語る時の出場者の表情です。中には涙を浮かべながら、「あの日、あの時の体験」、「その後の日本人の姿」を必死に話してくれていました。「この弁論大会を通して日本社会が元気になってほしい」という温かい思いが伝わってきました。 

◆  ◆  ◆ 

【震災の体験を語る①】
■王さん(中国:女性)「私はこの国を信じている」
岡山の大学で勉強する王さんは、地震で帰国を考えなかったものの、さまざまな人から電話、メールなどをもらったと言います。そして、「この大震災で全世界は日本を信じられなくなった」ことを痛感しましたが、だからこそ平静沈着に、いつも通り生活している日本を世界に伝えるのが自分の使命だと感じているのだそうです。日本で暮らし、日本社会をしっかり見つめている外国人の存在のありがたさを改めて感じたスピーチでした。 

【震災の体験を語る②】
■スザン バハデュル アディカリさん(ネパール:男性) 「命どぅ宝(ぬちどぅたから)」
スザンさんは「人が泣いている時は一緒に泣きなさい。それができなければ涙を拭いてあげなさい」というお祖母さんの教えを胸に、東日本大震災の被災地、被災地以外の日本の情報を母国に伝えることこそが、今外国人の自分がすべきことだと大きな声で語ってくれました。『ホステーマ・ハイーセ』(ネパール語)、みんなで力を合わせて頑張ろう」というスザンさんの言葉は聞いている人々の胸に響きました。 

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【日本語の面白さと難しさを語る①】
■クダクワシェ ムテンダ(ジンバブエ:男性) 「OSU(押忍)」
空手が大好きなクダクワシェさんは、来日して5年、「オス」という言葉が大好きです。「オス」は「押忍」と書きますが、「忍」という漢字は「刃」と「心」から出来ています。つまり、誰でも自分の心の中に刃があり、それを押さえるという意味が「押忍」なのだそうです。この言葉を知って改めて「日本人は少ない言葉でたくさんのことを話すことができる人達だ」と思ったそうです。そして、「OSU」を世界共通語にしていきたいと熱く語ってくれました。空手、日本が大好きなクダクワシェさん、いつまでも日本に居てくださいね! 

【日本語の面白さと難しさを語る②】
■コウ ショキ(中国:男性) 「『ちょっと』の処方箋」
黄さんは、四国で勉強している大学生で、お遍路が趣味だと言います。彼は、日本人の「ちょっと失礼します/ちょっとそこまで/ちょっといっぱい」といった表現に関心を持ったそうです。「ちょっとは一寸、つまり3.3センチの物の長さと時間の長さを表す」のだと説明し、みんなが狭い道路で「ちょっとの譲り合い」をするお陰で日本では交通事故が少ないのだと日本社会を褒めたたえました。さらに、東日本大震災が起こった今、「ちょっとした思いやり」「ちょっとした協力」がとても大切なのだと聴衆に語りかけました。 

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【母国と日本の文化の違いを語る①】     

スピーチをするタウンラさん

スピーチをするタウンラさん

                     
■タウン ラ(ミャンマー:女性) 「私の異文化体験―愛の伝え方」      
ミャンマーのカチン族の衣装に身をまとったタウンラさんを見て、私は懐かしさでいっぱいでした。彼女はイーストウエスト日本語学校を卒業後、専門学校で学び、「やっぱり大学に進学したい」と聖学院大学に入学したのです。歌好きのミャンマー人は歌で愛の告白をするそうです。「あなたの目はパールと同じくらい美しい」「あなたの姿が目に浮かんではなれない」といった歌詞をちりばめて歌を作ったりするそうです。こうした自分達の文化の独自性に気づいたのは、日本文化に触れたからだと、異文化体験の大切さについて話してくれました。内向きになりがちな日本の若者にぜひ聞いてもらいたいスピーチでした。 

【母国と日本の文化の違いを語る②】
■ソン リイ(中国:男性) 「トマトのスライスに塩?砂糖?」
トマトに「塩をかける中国人」である孫さんは、「砂糖をかける日本人」に出会ってびっくり! 最初は「トマトに砂糖をかけるなんて信じられない」と思ったけれど、食べてみるとどちらも美味しく感じられました。つまり違うから触れあうのを怖がるのではなく、違いを認め、共存することが大切です。桜の花と牡丹の花は確かに違うけれど、どちらも美しいように……。「世界中のさまざまな花をきれいに咲かせることこそが、真の国際交流の実現なのだ」というソンさん、一緒にたくさんの花を咲かせましょう!! 

文部科学大臣賞を受賞したタウンラさん

文部科学大臣賞を受賞したタウンラさん

参考:審査結果は以下のサイトでご覧ください。
財団法人国際教育振興会http://www.iec-nichibei.or.jp/iec04_2.html
国際交流基金http://www.jpf.go.jp/j/japanese/event/benron/index.html

受賞した3人で記念撮影

受賞した3人で記念撮影

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