能って面白い! 能のワークショップを体験して

今年もまた「留学生のための能ワークショップ」が開かれました。これは、ご近所にお住まいの武田志房(ゆきふさ)先生が、イーストウエスト日本語学校で学ぶ留学生のために特別に実施してくださるワークショップです。毎年、学生達は事前学習をし、ワクワクしながら出かけていきます。今年は、ご子息文志(ふみゆき)先生の解説で、友志(ともゆき)先生と佐川勝貴先生、お三方によるワークショップでした。

まずは、すり足などの足の運び方や面(おもて)をちょっと上げたり下げたりするだけで、人の表情が大きく変わることなどを学びます。さらには、面をつけない直面(ひためん)についての説明です。一切表情を変えない顔面でも、ちょっとした角度、上げ下げで、違う気持ちを表現することができることに皆驚いています。実は、これは人とのコミュニケーションでも役立つ「気づき」なのです。

さまざまな「お面」についての説明

「能は難しいと思わないで、今日は1つ自分なりにテーマを決めて見てください。謡(うたい)でもいい、すり足に関心を持ってもいい。面の表情や、構えでもいいですよね。または、ストーリーが分からなくても、キーワードを聞き取って考えていくのもいいと思いますよ」

文志先生のアドバイスにみんな大きく頷いています。そして、面、扇、衣裳の詳しい説明があり、そこには歴史的な話も織り交ぜられています。

次に、3つのお仕舞を見せていただき、続いて高砂のお稽古がありました。皆大声を張り上げ、心の底から謡を愉しんでいました。

「高砂」の練習風景

休憩を挟んで「羽衣」の舞を見せていただきましたが、留学生が特に関心を示したのは、「羽衣」を舞うために衣裳を着せ、かずらをつけて1人の天女を作り 上げていく過程でした。長い時間をかけ、丁寧に1人の能を舞う人を作り上げていく姿に、伝統を大切にする日本の姿を見たと、何人もの人が感動していまし た。

最後に、解説者である文志さんは、こう話してくださいました。

「皆さん、KYって知ってますよね。実は、『空気を読むトレーニング』には能がすご
く良いんですよ。能は感じる芸能です。何でも良いから、どんなことからでもいいから、興味を持ってみていくと、いろんな発見があるんです。これからも能を楽しんでください」

羽衣の準備を真剣に見ている留学生

学校への帰り道、私は留学生たちとの会話を楽しみました。

「先生、『高砂』って、本当に結婚式で歌うんですか」
「そうよ。だから、みんなも日本留学の成果として、『高砂』を覚えて帰って、友だちの結婚式で歌ってみて」

では、最後に留学生の書いた感想コメントの一部を幾つかご紹介したいと思います。

○私は結構長い間能を見に行きたかったんですが、チャンスがありませんでした。最初の印象が一番大切なので、能ワークショップに行く前は、少し心配しまし た。でも本当にすばらしかったです。私の国(ロシア)にはそのような芸能がないので、能は私にとってすばらしくて不思議な世界のようなものになりました。 心から何回もありがとうございます。(ロシア 女性)

○初めて見た能は自分にとって不思議な経験でした。思ったより静かでゆっくり動く姿で、ほかのものとはまったく違ったことを知りました。韓国でも面を被っ て踊ったり歌ったりする劇があります。それは軽快な雰囲気です。それと違って能を見て、何だか分からないけれどちょっと悲しみを感じました。とても良い経 験でした。(韓国 男性)

○台湾にもそんなような能劇がありますけど、国劇という劇です。昔から今まで続けている劇です。でも、今だんだん減ってきています。国劇は面を使わないで す。直接顔に色をぬって、黒と白と二つ顔だけありますけど、いろんな人と表情を表すことができます。能劇は日本の昔の伝統の文化です。本当にすばらしいと 思います。面とか着物とか扇子、全部面白かったです。面をかぶって喜・怒・悲・楽を表します。本当に不思議だと思いました。(台湾 女性)

○初めて能の演劇を見る機会があって、すごくいい経験になりました。能楽を聞いて、全部理解することはむずかしいでしたが、もう一度見たいと思いました。 文化は言語だけじゃなくて体験することだと思いました。それから、面という仮面とか衣装とかを大切にする姿を見て、伝統を感じました。男性がだんだん女性 になる姿が不思議に感じました。(韓国 女性)

○私は初めてお能を見ました。むかしの言葉を使って色々な物語がありました。しょうじき、内容は良く分かりませんでしたが、お能の説明や服装についての説 明はとても分かりやすくて、面白かったです。特に、お能の歌(高砂)を習う時間は私たちに役に立ちました。日本は東アジアの中ででんとう文化を守る努力が 一番強い国かもしれない感じがしました。そして、父子と兄弟がでんとうをずっと続けているのは大切なことだろうと思います。(韓国 男性)

○歌を教えてもらう時、そこで一緒にできることがあって、嬉しかったです。また、最後に学生が質問した「能の面の値段」について、「役者として値段をつけ られない」とおっしゃった時、どのぐらい能を大切に思っているかが感じられて感動しました。今度のワークショップがきっかけで、日本の文化にもっと近づい た気がしました。
(韓国 女性)

○能とは詳しく説明はできませんが、かぶきとともに日本の古典劇の一つです。能は複式呼吸により声を出します。これは非常に健康にいいと言われています。 稽古は礼に始まり礼に終わります。この能の世界では3歳位で初舞台を迎える子供が多くいます。一方で高齢になっても謡や仕舞を楽しまれる方もたくさんいる と聞きました。能についてきほんてきな知識をもって能を見れば、もっと感じることができると思います。(韓国 男性)

◇ ◇ ◇

関連記事
紫式部の仏罰〜源氏物語千年紀によせて〜三国章 2008/10/11
『能のふるさと散歩』を読んで中村孔治 2006/11/08

カテゴリー: ワイワイガヤガヤ日本語学校 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>