7日の日経新聞朝刊に載っていた記事を見て、私は目を疑いました。「海外で日本語を勉強する人の数を10年間で3万人にする」というのです。その数は「3万人」と述べていますから、「現在は1万人しかいない」ということを意味します。実際とはあまりに大きくかけ離れた数が提示されていました。
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海外で日本語教育強化
■政府 政府は海外で日本語を勉強する外国人の数を2021年度までに3倍の年間3万人にする計画をまとめた。海外の有能な人材を日本に招き、経済成長につなげる狙い12年度以降、ウズベキスタン、ラオスなどで新たに日本語教室の開設を支援し、海外の教室数を10年間で30か所に増やす予定だ。
(日経新聞11月7日朝刊)
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新聞記事は、たったこれだけの記事であり、政府のどういう発表だったかも定かではありません。インターネットでいくら調べてもニュースソースを突き止めることはできませんでした。何か「前提条件」が抜けているとしか思えません。これは、ある機関が関係している学習者数なのか、ある地域に限っての話なのか・・・・・・。いずれにしても、記事としては不十分なものであり、フェイスブック上でもアレコレやり取りが見られました。
よく考えれば、この数は「海外における日本語教育全体」について述べているのではないことは、すぐにわかります。しかし、これを好機として、一般の方々にもより詳しく実態を知っていただきたいと思い、「海外日本語教育概況」について簡単に記すこととします。詳しくは国際交流基金のサイトをご覧ください。
国際交流基金では「海外日本語教育機関調査」を実施し、報告書をまとめています。
http://www.jpf.go.jp/j/japanese/survey/result/index.html#01
2009年度版をみると、海外における日本語学習者数は3,651,232人、上位3カ国は以下のとおりです。
一位 韓国 964,014人
二位 中国 827,171人
三位 インドネシア 716,353人
また、2006年の総数は2,979,820人ですから、22.5%の増加率となっています。世界各国・地域で日本語や日本文化に関心を持ち、日本語を学ぼうとする人がさらに増えることは、素晴らしいことだと思います。その国の言葉を学ぶということは、その国の文化を理解し、そしてその文化を作っている人々を理解することにつながります。日本を知り、日本理解者が少しでも増えることを願っています。
今回の新聞記事が、何を伝えようとしていたかは定かではありませんが、「海外での日本語学習者数を2021年度までに3倍に」というのは、大いに歓迎したいことであり、今後さらにこうした発表がなされることを期待しています。