中野の方々との触れ合い①~“なでしこ”のつぶやきと共に~

 
「なでしこ会」の方々と
「なでしこ会」の方々と

暑い夏のお昼過ぎ、「なでしこ会」の方々が9人、アクラスにお見えになりました。「なでしこ会」について簡単にご紹介すると、「中野区まちかどサロン」の一つで、70歳から88歳までのおばあちゃま方によるボランティアサークルです。おばあちゃま方とご一緒に活動し、さまざまな企画をしているのは、60代のムンさんです。ムンさんと私とのお付き合いは、もう20年以上。「地域に根付いた日本語学校作り」「地域の中の『人の輪』作り」をめざして共に歩んできた良き「戌年仲間」なのです。

「なでしこ会」は、最初は週1回メンバーのお宅に集まって布巾やランチョンマットを作り、作品がたくさん集まると販売し、その収益を中野区の国際交流活動や地域留学生の支援活動に寄付をするという活動をしていました。私が以前勤務していたイーストウエスト日本語学校は、今までもさまざまな形で交流をしてきました。留学生が一緒にボランティア活動に参加させていただいていた時期もありました。そして、毎年一番のハイライトは、3月に行う「なでしこ作文コンテスト」です。

この「なでしこ会」メンバーの活動は年々活発になり、今では週3回集まって、作品作りに励んでいらっしゃるのだそうです。年を取れば取るほど、忙しくなる「なでしこ会」の方々、ご家族は「家のおばあちゃん、女優並みの忙しさだねえ」と、驚いていらっしゃるとのこと。

何しろ週3回のボランティアに加え、メンバーの一人が「こんな良い講演会があるのよね」と言えば一緒に出かけ、またある人が「そうそう、今度面白い展覧会があるんだけど……」と言えば、またまたみんなで揃ってお出かけです。

今回は、毎週火曜日のボランティア活動を「アクラス訪問」に振り替えてくださったのです。私が3月にイーストウエスト日本語学校をやめたということで、皆さんは「嶋田先生は、どんな所で新しい仕事を始めたんだろう」と、暑い最中日傘を差してお越しくださったのです。私は、「中野の地元の皆さんとご一緒に活動してきた22年間」に改めて感謝し、また、日本語学校を辞めてからもずっとずっと繋がっていられる「地域社会との人間関係」に胸いっぱいになりました。

布巾

布巾

実は、昨年の東日本大震災後、「なでしこ会」は、布巾作りの収益を「被災地への義援金」として送ることにしました。そのためいつも以上にピッチをあげ、布巾作りに励みました。また、販売に関しては中野区社会福祉会館(スマイルなかの)に場所を借り、1カ月間販売を続けました。その布巾には次のようなメッセージが入れてありました。

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◆“なでしこ”のつぶやき

 この度被災した方々の気持ちに寄り添いたいと、ささやかな行動を起こしています。皆さんもこの機会に自分のライフスタイルを見直し、“不便さ”の中に人々の助け合いが生じるのだということをもう一度考えていただけたらと思います。(平均八十才の会)

◆お買い上げありがとうございました

これは自分のできること、みんなでできることを通して楽しく、元気な毎日を送りたいというお年寄り達が作りました。お買い上げいただいたお金は今回の震災で被災された方たちへの義援金として使わせていただきます。           (なでしこ会)

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最後にちょっと「なでしこ会」の方々のお話をご紹介しましょう。

●私は、今、八十八歳です。でも、この「なでしこ会」のおかげで、ずっと何年も病気をしていないんです。元気のもとは仲間と一緒の時間を持つことですね。

●「年を取ったら、してもらうことばかり多くなります。そうじゃなくて、「一緒に何かをしたい」「みんなのお役に立てることをしたい」、そんな気持ちがどんどん強くなっていきました。

●地域っていいんですね。いくつになっても、こうやって一緒に動き回れる仲間が居て・・・。「なでしこ会」がなかったら、私、とっくにボケてますよ。

●私たち忙しいんですよ、本当に。時間が足りないくらい。「なでしこ会」が週3日。それから手話ダンスに、講演会、区民大学もあるし・・・。

●年を取ると、やってもらうのが当たり前になりがちでしょ。そうじゃなくて、年寄り自身が「人のためにできることをしたい」って思うんですよね。今は、それができるので幸せです。

そして最後にこんなお話を~~~。

「ねえ、嶋田先生。今、世界中で『なでしこ、なでしこ』って騒いでいるけど、「なでしこ」を名乗ったのは、私たちのほうが先なんですよ。まあ、サッカーのほうが随分有名になっちゃったけど。本家本元は私たち「なでしこ会」なんですよ。あっはっは!」

どこまでもお元気な「なでしこチーム」でした。ぜひまた遊びにいらしてくださいネ!

参考:これまで「日本語教育<みんなの広場>」に載せた「なでしこ会」関連の記事の一覧を載せておきます。

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■「『なでしこ会』の皆さま、いつまでもお元気で!」(2012.3.27)http://nihongohiroba.com/?p=2413

■「『なでしこ会』との交流は宝物」(2011.3.10)http://nihongohiroba.com/?p=1115

■「お年寄りの作品バザーを日本語学校で」(2009.10.21)http://nihongohiroba.com/?p=508

■「交流活動をテーマに『なでしこ作文コンテスト』」(2009.3.19)http://nihongohiroba.com/?p=141

■「『布巾作り』でお年寄りボランティアと留学生が楽しく交流」(2008.9.12)http://nihongohiroba.com/?p=236

【一部関係する記事】

□「地域社会の一員としての日本語学校」(2011.7.29)http://nihongohiroba.com/?p=1644

※「日本語教育<みんなの広場>」2012年3月、2011年3月、2010年3月、2009年3月に、その年の「なでしこ作文コンテスト」の最優秀賞、優秀賞(2人)の作文が載っています。

中野リハイムの前で

中野リハイムの前で

 

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