多文化共生をめざす「日本語コミュニケーション・ワークショップ」

司会もすべて学習者が担当します

11月26日(月)の午後、横浜市国際交流協会(YOKE)にて「日本語コミュニケーション・ワークショップ第4回」が開かれました。近年アチコチで「外国の方との交流会」など、さまざまなイベントが行われています。その中で、このワークショップをぜひ皆さまにご紹介したいと思ったのは、次のようなことからでした。

〇本ワークショップは1回のイベントとしてではなく、4回の継続プログラムとして設計され、また、日本語プログラムの一環として行われたこと。

みんな参加者が作ったお料理です

〇ファシリテーションは、日本語非母語話者の日本語教師(中国およびベトナム出身)と、日本語母語話者の日本語教師がチームとなって行い、コーディネーターとともに企画・運営をしていたこと。

〇ふだん日本語教室で活動しているメンバーだけではなく、一般市民を巻き込んでのワークショップになったこと。その方々も、会を重ねるごとに「自分も作り上げる存在」として意識し始めたこと。

このワークショップは、生活に密着した情報のやりとり、話し合い、行動・体験を重視した活動を通して、日本語を学ぶ人々と地域に暮らす日本語母語話者が学び合えることを目的として企画されました。では、どんな活動だったのか、ここでは最終回の第4回のワークショップを中心にご紹介したいと思います。

自分の料理の紹介をしています

4回シリーズ全体の流れは以下の通りです。

■4回のシリーズ

1)おにぎり交流会  10月15日(月)
2)健康・病気・けが 10月29日(月)
3)よこはま発見!  11月7日(水)
4)ミニ・インターナショナル・フードまつり&ゲーム大会 11月26日(月)

■ファシリテーター

・矢部まゆみさん(横浜国立大学非常勤講師・横浜市国際交流協会日本語学習コーディネート業務アドバイザー)
・中山利恵さん(日本語教師・中国出身)
・ファム・ミーリンさん(元日本語学校講師・ベトナム出身)

では、第4回ワークショップのご紹介に移ります。

自分で作ったシートを配って、歌を披露

■学習者による司会進行

ベトナム出身のLさんと、インドネシア出身のDさんが司会を務めました。準備したスクリプトだけではなく、アドリブを入れたり、料理を作った人にインタビューをしたり・・・・・・。この二人の司会で、会はぐっと和みました。何よりも司会者本人が楽しんでいたのが印象的でした。最後は、Dさんの三本締めと、Lさんの一本締めと二つの「締め」をして、大きな笑い声とともにお開きとなりました。

■料理もすべて持ち寄り

机の上には、乗りきらないほどのお料理が並んでいました。みんな自分の国の料理を一生懸命に作ってきてくれました。日本人参加者の中には、「旅行に行く時も、今日のことが頭にあって……」と、金沢の和菓子を持って来てくださったり、「日本的な料理を知ってもらいたいと思って……」と、きんぴらごぼうや大学イモ、おいしいお漬物を持ってきてくださったり……。

〇「キムチチヂミ、おいしい!」

学習者がこの日のために作った歌詞シート

 「そうですか。このキムチ、母が1週間前、送りました」

〇「このラザーニャ、おいしいですねえ」
 「わたし、コックです。イタリア料理。えびな近くです」

〇「これは何ていう料理ですか」
 「これ?エチオピアで、ドロ(doro)。ドロは鳥です」
 「へえ、エチオピア語でドロは鳥なんだ。日本語は何だと思う?」
 「わかりません。あの、これ、とてもおいしいです。辛くない、辛くない。どうぞ」

他に、ベネズエラの手作り菓子、ベトナム料理、タイ料理、台湾料理、中国料理、アメリカ料理、インドネシア料理・・・挙げたら切りがありません。

■ゲームも日本語学習を考えて・・・

ゲームは、カードに書かれている日本語の文を「ジェスチャー」「イラスト」を使って当てるというものでした。各班競い合って、夢中になって手を挙げていました。カードに書かれているのは、次のような簡単な文なのですが、なかなかそれをジェスチャーで当てるのは大変です。

・食べる前に、手を洗います。  
・わたしは犬を飼っています。
・きのうテレビですもうを見ました。

■ゲーム・歌の準備はすべて学習者が・・・

ゲームではカードが必要でしたが、それもすべて学習者が準備しました。また、中国から来たJさんが「月光浴」を歌ってくれましたが、全員に配った歌詞シートは、彼女が作ってきたものです。その後、「上を向いて歩こう」を歌いましたが、そのシートもオハイオから来たAさんが作ってきたものです。

■日本人にも変化が……

参加したボランティアの方々の感想をご紹介しましょう。

〇掲示板でお知らせを見て、何となく参加したけれど、本当に楽しかったし、勉強になりましたねえ。

〇こんなに外国の人が地域に住んでいるなんて、知りませんでした。これからはもっと積極的に会う機会を作ろうと思いました。

〇英語が出来なくても、「やさしい日本語」で言えば、通じ合えるんですよね。今日はお互いの料理について話をしたり……。楽しかったです。

■他への波及効果が……

聞いていて嬉しかったのは、「私は、他の区で活動しているんですが、このワークショップにはいっぱいヒントがありました。それを参考にして、地元でもこんなこと、やってみたいと思っているんです」という意見が幾つも出ていたことです。「多文化共生社会づくりをめざした日本語教室」と言いながら、実際にはなかなか「双方向の学び」ができていないのが現状です。本当の意味で多文化共生社会を実現するには、何よりもマジョリティである日本人の意識が変わっていくことが重要です。こうした小さな種をたくさん蒔き続けることで、いつか大きな花が咲くのだと思います。

みんなで記念撮影「楽しかったね!」

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