裁判を傍聴した留学生の声

裁判員制度は1年半後の2009年5月に始まります。裁判に関する映画やドラマの人気も高まってきていますが、果たして関心を持つ人がどれだけ増えてきているのでしょうか。「百聞は一見に如かず」、まずは裁判を傍聴することをお勧めします。

日本語学校の上級クラスで「猫ばばと死刑」という課に入ると、裁判について討論をし、レポートを作成したあとは、日本の裁判を傍聴しにクラス全体で出か けることにしています。最近では5つのクラスが東京地方裁判所に出かけ、「詐欺事件」「覚せい剤事件」「窃盗」などの裁判を傍聴し、生きた勉強をしてきま した。あるクラスでは、71歳の男性の「詐欺事件」の法廷に入りました。初めての裁判に真剣な面持ちで裁判官や検察官の話に聞き入っていました。70を超 えた人が手錠をかけられて入廷した時の衝撃、人が人を裁くことの難しさ、日本語の語彙力の不足、求刑に対する疑問……。留学生たちからは素直な感想が次々 に飛び出しました。

裁判傍聴に向かう留学生達

裁判を傍聴したあとは、裁判所の構造、日本の裁判制度、そして2009年から始まる裁判員制度等について書記官より説明がありました。裁判員制度に関心 を抱いている留学生からは、鋭い質問が次々に飛び出しました。ドラマや映画の中の裁判との違いについての質問も出てきました。

(1)裁判官と裁判員で意見や判断に重さや差はありますか。

(2)裁判員になる人の資格は何ですか。前科のある人とか暴力団員なども裁判員になれますか。やっぱり外国人はなれないんですか。

(3)国会議員は裁判員になれますか。

(4)韓国では裁判員制度はまだ導入されていませんが、今賛否両論あります。法律の専門家は素人の裁判員が入ることに反対意見はなかったんですか。

(5)日本の裁判員制度とアメリカの陪審員制度の違いは何ですか。

(6)どうして日本では裁判員制度が必要だと思ったんですか。

(7)裁判員に守秘義務があっても、こんなふうに「傍聴」が認められれば、誰が裁判員か分かってしまうと思います。身の安全は本当に保証されていますか。

(8)テレビドラマ「ヒーロー」で、サングラスをかけた人が出てきますが、それは実際には認められることですか。

(9)どうして検事さんは風呂敷に書類を包んで来るんですか。カバンのほうがいいじゃないですか。

(10)検察官の言い方は、声も小さいし、わかりにくいですね。どうしてもっとはっきり言わないのですか。

法務省の資料室を見学して

次に、留学生たちの求刑についての意見の一部をご紹介しましょう。十人十色、それぞれ考え方も解釈も異なります。本を読んでの話し合とは違い、実際に裁判を傍聴しての意見交換ですから、迫力満点です。これまで学んだ日本語を駆使して、ディスカッションが始まりました。

Aさん:被告は、なげやりになっていて裁判中の態度や顔の表情からも反省の様子は見られません。すぐに社会に出ても、またなげやりになって、同じことをしてしまうと思います。懲役10年でもいいと思います。

Bさん:刑務所ではもっと悪い人とも知り合います。その人からの影響で社会に出てから、もっと悪いことをしてしまう可能性もあります。この被告の場合は、前科がありませんから、懲役は6カ月ぐらいにしたほうがいいです。

Cさん:裁判中の被告人の態度や表情からは、本当に反省しているのかどうか分かりません。実際にどのような気持ちでいるのか、もっと詳しく調査をしなければならないと思います。1年の求刑は重すぎます。

世界のさまざまな国・地域から来た留学生たちは、自国の裁判制度を思い起こし、目の前で裁かれる被告人を前に「人の生き方」「裁判員制度の導入」について改めて真剣に考えていました。最後に、10人の留学生の感想メモをご紹介して終わりに致します。

○どんな形で裁判が行われるかということと、裁判所の雰囲気が分かるようになったことが大事だと思いました。裁判員制度について、いろいろ説明を聞いて、もっと深く考えるようになりました。これからも授業以外にもっと多くの経験ができたらいいなと思いました。

○学校は時々遅刻しますが、今日は裁判所に行く日なので早く起きました。始めていく場所なので、ドキドキしました。来る前には本当に難しいだろうと思った のですが、実際見てみるとあまり難しくなかったです。ことばの勉強にもできたし、人生で一度しかないような裁判所を見学して嬉しいです。

○考えたのよりよかったです。特に弁護士さんが意外に面白くて、そんなに固い雰囲気ではないなと思いました。また来てみたいです。もっと面白い裁判で・・・。法務図書館もほん〜とうによかったです。こんなにすばらしい建物が残っているのもびっくりですね。

○思ったより恐ろしくはないけれど、やはり手錠をかけられている人を見て、裁判官の人の判断力が何よりも慎重でなければならないと思いました。

○今日は本当に楽しかったです。いろいろなこともたくさん勉強になりました。あとで時間があったら、一人でもいいからもう一度行って見たいです。説明会もやさしくしてくれて、分かりやすかったです。

○やっぱり一般人だから感情が入り、実際に犯人を見た瞬間大変ショックでした。何だか私たちの考え方は、被告人に気の毒な感じがしました。言い換えれば、 2009年から導入される裁判員制度で、一般市民である裁判員が今回の私と同じインパクトを与えられ、つい判断力が弱くなるという恐れがあるように思いま す。貴重な見学経験、すごくよかったです。いい勉強になって嬉しいです。

○見学で裁判所に来て、難しいことばとかを実際に聞いて、もっと頭に残ったのでよかったし、考えよりよく理解できて嬉しかったです。被告人が年上のおじさ んだったので・・・…また全部あきらめてしまった人のように見えて、どうしてそこまでいってしまったかなあと思いました。かわいそうでした。

○裁判というのは、初めて傍聴したから、ちょっと重い感じがあったけれど、人が人を裁くこと、とても難しいと思いました。被告人が、できればいい人生を過ごせるようにすることが、裁判のいい方法じゃないかと思いました。

○今日は初めて裁判所に行って、現実に裁判を見ました。自分が想像している裁判は、全然違いました。今回の体験は本当に楽しかったです。裁判というのは、 人が人を裁判するのはやはり難しかったです。被告人の気持ちと自分が持っている知識など、それにさまざまな原因をもとにして考えていて、裁判するときには 「正しい」とか「間違いない」とか言えませんでした。どっちが正しいか判断するのは難しいです。

○今日、裁判所に来てよかったと思う。本当の裁判を見て、緊張感もあったし、見た後に説明を聞いて、気になった部分を知る事ができたのがよかったです。ただし、ドラマでよく見る木槌は、日本では使わないと聞いて本当にびっくりしました。

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