ハングル書芸展での素敵な出会い

 

尹東柱「序詩」の前で

尹東柱「序詩」の前で

3月下旬、原宿で行われた「ハングル書芸家:螢園」の書芸展を見に行ってきました。これは、イーストウエスト日本語学校を10数年前に卒業し、AIエンターテイメントという会社を立ち上げ大活躍している崔尹禎さんの招待によるものでした。「ハングル書芸って、どんなものなんだろう?」と、久しぶりに崔さんに会いたい一心で出かけていきました。

そこには、何と私の大好きな韓国の詩人「尹東柱(ユン・ドンジュ)の代表作である「序詩」、「春香伝」など韓国の古典文学作品が所狭しと飾ってありました。それも、同じような書体ではなく、さまざまな書体で書かれていたのです。

崔さん&崔さんのお母さまと

崔さん&崔さんのお母さまと

やがて小宴が始まり、崔さんのスピーチが会場に響き渡りました。

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「実は、螢園(ヒョンウォン)は、私の母、鄭明子(チョン・ミョンジャ)なんです。私は、母が還暦を迎えた2005年に、母へのお祝いの気持ちから、日本(銀座)で初めてハングル書芸展を催しました。そして今回の書芸展が2度目となります。私が、今、こうして螢園のハングル書芸展をしたいと思ったのには2つの理由があります。1つは、今、韓国と日本の間には、いろいろなことがあります。こんな時だからこそ、芸術の世界で、芸術を通して、もっともっと韓国と日本が近い関係、親しい関係でありたいと思いました。もう1つは、母のような年齢の人達の素晴らしい生き方に感銘を受け、さまざまな「女性の生き方」を追求していきたいと考えました。それが今回、書芸展を開きたいと思った理由です。」

ティータイムに・・・

ティータイムに・・・

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二十年も前に、私が韓国語を独学で学び始めたのは、韓国から来た学生の名前を正確に呼びたいと思ったことがきっかけでした。「陸泰星」を日本式読み方「リク・タイセイ」と呼ぶのではなく、原音読み「ユク・テソン」と呼びたかったのです。そして、次第に私は韓国の詩に強い関心を持ち始めました。その時出会ったのが、「尹東柱」の詩でした。その中でも、「序詩」は私の心を強く打ちました。

「序詩」の前で記念撮影した私は、その詩を口ずさみ始めました。それを見た崔さんは「えっ、先生、この詩が好きなんですか。私も大好きです!」と。そして、お母様の書芸家「螢園」も、ニコニコしながら見ていらしたのです。

それから2週間後、私は素敵なプレゼントを手にしたのです。崔さんからの荷物が届き、中を開けると、「ハングル書芸:序詩」が目の前に現れました。会場で何度も立ちすくみ、眺めていたハングル書芸でした。何という素晴らしいプレゼントなんでしょう!

お礼メールの返信には、次のように書いてありました。

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こちらこそ本当にありがとうございます!そして、喜んでいただき嬉しいです。

自分も尹東柱詩人の大ファンで来日の際、詩人の写真を持って来るほどでした。中学時代から彼の詩は大好きで、高校の国語の自由発表で尹東柱を取り上げ、レポートを書いたこともありました。来日後日本語学校で勉強し、その後早稲田大学文学部に入学しましたが、ますます彼の魅力に惹かれていきました。     ・・・中略・・・

序詩を先生と共に共有できて本当に嬉しいです!!!先生の日本語教育のお仕事にも役に立つ弟子になれるように頑張りたいと思いますので今後ともどうぞ宜しくお願いいたします!

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時を経ても、卒業生とこうして心が繋がっていられる日本語教師という仕事は、何とやりがいのある、充実した仕事なのでしょう。幸せを改めてかみしめた瞬間でした。

書芸「尹東柱の序詩」

書芸「尹東柱の序詩」

 

序詩

序詩

 

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