俳句を通した出会い

1席になった李さん

「へええ、半年、1年ぐらいしか勉強しないで、こんなすてきな俳句ができるんですねえ。留学生の意欲ってすごいですね」

ご近所の方々はこう言いながら、クラス代表句(26句)からお気に入りの一句を選んでくださいました。パン屋さん、お弁当屋さん、地域センターに通うおばあちゃま達、町内会のメンバー、その数は60にも上ります。

9月上旬から始まったイーストウエスト俳句コンテストは学内の日本語教師や職員をはじめ、地域社会の日本人の方々の選句によって1席から3席が決まりました。

1席: 初めての ひとり旅道 友はせみ   (M6 李 珍花)
2席: 花火より 浴衣着たきみ まぶしいよ (M4 安 孝貞)
3席: 花火上げ 水面に咲く 海の花    (A1 陳 霞)

今年はさらに特別賞を設け、俳句の先生からコメントを頂くことにしました。そして選ばれたのが次の句です。

特別賞: 青空に 手を広げて 秋を取る   (M8 宋 磤基)

表彰式では賞状と賞品に加え、俳句の先生から頂いたコメントシートが渡されました。

特別賞の宋さん

【俳句の先生からのコメント】

この句は、俳句らしい感覚の句だと思います。秋の爽快な感じがよく出ています。中七が「字たらず」になっているのが惜しまれます。「青空にもろ手を広げ秋を抱く」のようにすれば、字足らずが解消され、のびのびとした青春俳句になります。

自分の作った俳句に対して俳句の先生から丁寧なコメントをいただき、受賞者の宋さんは大感激。早速心を込めてお礼状を書きました。

【宋さんから俳句の先生への手紙】

俳句の先生へ

初めまして。先生、私はイーストウエスト日本語学校の宋磤基と申します。

学校の授業で初めて俳句を作りました。最初はルールを聞いて、難しいなと思いました。夏だけではなくていろんな季節について考えました。それでそろそろ秋になるから秋の空を想像して作りました。

作った時の空はまだ夏の空だったけれど、私が好きな季節が秋なので、秋の高い空を想像して作りました。特別な思い出はありませんが、私は空を見たら時々 写真を撮ります。空の中で秋の空が一番好きです。大好きな秋の空を俳句にしてみたら、俳句の先生から青春の句だといっていただいてとても嬉しかったです。

最初は私も秋の空を両手で抱きしめる気持ちで作りましたが、作った時には言葉がわかりませんでした。先生が「秋を抱く」はどうですかと書いてくださいましたが、私もそれが本当の私の気持ちだと思いました。

私は理系なので、国でもあまり国語の勉強は好きではなかったのですが、俳句はルールがあって、短い言葉で書けるから、ルールがない作文よりおもしろかったです。

お忙しいのにわかりやすくコメントをしてくださって本当にありがとうございました。

9月20日
イーストウエスト日本語学校        宋 磤基

4つの句を前にした安さん(2席)

地域社会やさまざまな方々との交流の中で日本語を学び続ける留学生達。教室を超え、地域や国を超え、共に学び合える日本語教育をこれからも目指していきたいと、改めて強く思った「イーストウエスト俳句コンテスト」でした。

読者の皆さまも、ちょっと日本語学校の門を叩いてみてください。きっと何か新しい出会いが待っていることでしょう。

カテゴリー: ワイワイガヤガヤ日本語学校 パーマリンク