今日は、上級クラスM1、M2の合同句会でした。丁度仕事で来日していた15年前の卒業生、頼素稠さんも飛び入り参加。頼さんは、現在台湾の大学で日本語を教えていますが、「台湾でも俳句の授業を取り入れてみたい」と大張り切りでした。「先生、私の時代には句会なんてしてくれませんでしたよね」とちょっぴり批判も飛び出しました。確かに15年前の私は、留学生の授業で俳句を実施し、句会を愉しむという発想はありませんでした。10年前に始めた句会は、いまや初級クラスの学生から上級まで学校あげてエンジョイしています。今週末にはクラス代表の句が出揃い、「イーストウエスト俳句コンテスト」が行われます。
今日の句会に向けて、それぞれのクラスで俳句の説明、俳句鑑賞、そして俳句作りに励みました。2つのクラスの事前学習の一端をご紹介しましょう。
M1クラスは、「オノマトペ(擬音語/擬態語)クイズ」を愉しみました。俳句の世界で「オノマトペ・チャンピオン」といわれる小林一茶の句を使ってワイワイガヤガヤ。
「『○○○○と 竹かじりけり きりぎりす』、これは一茶の句ですが、「○○○○」にはどんな言葉が入ると思いますか」
とユニークな切り出しです。さて、皆さんならどんなオノマトペをお入れになるでしょうか。授業ではあれこれ意見が出てきました。そこで、今度は教師が次のような5つの選択肢を出して、訊いてみました。
<こりこり、もぐもぐ ぽりぽり がりがり がしがし>
答えは「がりがり」ですがいろいろな意見が出され、それぞれの気持ち、語感について話し合いが行われました。「読んだ人に気持ちや情景が伝わるような句を!」という教師の言葉は、しっかりと留学生の心に染み入ったようです。
M2クラスでは、金子兜太が出身小学校で行った句会ビデオを見て、俳句の楽しさ、吟行の面白さを学びました。俳句作りは夏休みの課題としましたが、殆どの留学生が作ってきたと言います。
こうして今日の句会を迎えました。卒業生の頼さんと一緒に特別参加した私は、教室に入ってびっくり。今年は、司会、集計、賞状書き、すべて留学生が担当し ています。俳人が来校しての特別句会、担当教師による句会などさまざまな形態で行ってきましたが、今年の上級クラスでは、留学生が全て取り仕切ることにな りました。選句が済むと、披講が始まり、ここでもワイワイガヤガヤ楽しいやり取りが進められました。
「えーと、17番、『墨田川花火と共に消えた恋』を作った趙さん、どんな気持ちでこれを作りましたか」
「『ゆかた着て鏡の前で一時間』の宋さん、浴衣着て、誰と、どこに出かけたんですか」
鋭い質問も飛び出します。留学生の生活がにじみ出た句、恋人への想いを詠んだ句、情景が目に見えるような句、すばらしい句がいっぱいありましたが、紙面の都合上、1席、2席のみ記すこととします。
1席 花火見て告白したが返事なし
趙常徳 韓国男性(チョウ サントク)
2席 風鈴に爽やかな風午後の歌
周雅玫 台湾女性(シュウ ヤーメイ)
2席 君と見た夜空の花火散る涙
南周鉉 韓国男性(ナム ジュヒョン)
留学生達は、とても楽しい時間を過ごしたようです。感想文の一部をご紹介して、今日の「留学生の句会」報告を終わることとします。
○みんなの俳句をみんなで読みながら感想をのべるのは非常に楽しかったです。限られたかたちで詩を作るのはむずかしかったですが、またやってみたいと思います。
○自分が感じていることとか、考えていることを直接言わず、ただ一つの単語ですべてをふくめて表現することが俳句のみりょくじゃないかな、と思いました。
○今日の俳句会は楽しかったです。先生ではなくて学生が司会者の担当をして、むずかしいこともありましたけど、いい経験になったと思います。
○初めての俳句で、結構いい作品がたくさん出来たなと思いました。書く前にはむずかしいことだと思い込んでいたんですが、案外と身近にあることをならべることだけでも、いい作品が作り上げることが出来るということに気がつきました。
○他の学生の俳句を読める機会が出来て、よかったと思います。その中で率直で夏の情景をよく表したものもありました。みんなで一緒に聞きながら、共感して話し合った部分もよかったと思います。聞いているうちに自分の夏の思いでが思い浮かんでなつかしい気持ちになりました。
○やはり夏の俳句だったので去年あった冬の俳句より全般的に夏らしくさっぱりした感じでした。もうそろそろ秋が来るので今回の夏の俳句大会を思い出しながら秋を迎えます。花火、蝉、扇風機、かき氷、暑い光……。もう秋ですよ。残り期間を大切にしながら過ぎます。