津軽三味線で知る日本の味

「私でお役に立つことがあったら、いつでも学校に出掛けていきますよ」小井手さんが声をかけてくださったのは、地域交流館「さくら館」の運営協議会での席 でした。地域社会と密着した日本語学校であることを願う私には、小井手さんの申し出がとても嬉しく、早速今年4月に来たばかりのクラスで「津軽三味線体験 授業」を実施することにしました。

「津軽三味線を聴く会」はこれまでにも何度かやってきましたが、今回は実際に留学生が三味線を手にし、自分達で一緒に弾いてみることができるという企画 です。さまざまな日本文化を学ぶ教室がありますが、体験学習にまでつながるものはそれほど多くありません。小井手さんは、何とか1人でも多くの留学生に体 験させたいと、5丁の三味線を持ってイーストウエストに来てくださったのです。

まずは着物の説明から始まりました。日本の四季に合わせて着物が変わっていくことに驚いている学生もいれば、ただただ着物姿に見とれている学生たちも居ます。いろいろ質問も飛んできました。

「あのう、テレビで見ましたが、それ、あの、袖ですか。それがもっと長かったんです」
「ああ、それは、振袖といって、若い女の人が着る振袖ですね」
「すみません。いくらですか」

初めての三味線演奏ですが、とても楽しそうです

そしていよいよ演奏です。「じょんがら節」「津軽りんご節」を聞きながら、学生達はその音色に聞きほれていました。ここで終わりなのではなく、そこから実 際に撥(ばち)を持って、三味線に挑戦です。恐る恐る撥を持ち、ジャンジャン、ジャンジャン……とみんなで先生の三味線と歌に合わせて弾き始めました。

最後は、京都出身の小井手さんの京都弁を聞いて、終了となりました。まだ来日して日が浅い彼らは、方言を聞く機会がほとんどありません。柔らかい京都弁を聞きながら、「いいですねえ。夏休みに大阪とか京都とかに行ってみたい!」と何人もの人が言っていました。

持ち方を教える先生

最後に、留学生の感想文のいくつかを紹介したいと思います。

——「今日は本当にありがとうございました。いいけいけんになりました。私は韓国の伝統音楽を習う高校を卒業しました。だからしゃみせんを一度見たかったんです。今日は本当にみじかい時間だったんですけど、いつかさくら館に行ってもう一度弾いてみたいです」

——「私は韓国から日本へ来る前に、日本のある芸人が三味線をひきながら『涙そうそう』という歌を歌うのを見てきょうみを持ち始めました。それで、三味線 を知りたくなりましたが、今日見るようになって嬉しかったです。いつか機会があったら、本当に三味線を学びたいと思います。今日はいい歌を聞かせてくだ さって本当にありがとうございました」

——「これまで津軽三味線を聴いたことがありません。これはすばらしいがっきです。私に日本の文化をしらせました。弾くことは難しいと思います。右手はよ くすべりやすいですから、声もちょっとむずかしい。着物もすばらしいですね。でも、季節の違いによって、着物は違うことが初めて分かりました。本当にあり がとう」

——「珍しい経験になりました。ありがとうございました。音楽はやっぱり世界の話し言葉です。音楽を聴きながら、いい感じも与えます。楽しかったです」

——「先生!本当にありがとうございました。ほんとに楽しかったし、良い経験でした。テレビとかアニメで見ただけで「見たいなあ」と思っていたのに、つい でに今日演奏もやってくださってほんとうにうれしかったです。そして、先生の歌もすごくすばらしかったです。京都のなまりも面白かったんです!!」

今後、イーストウエスト日本語学校では1学期に1回、「津軽三味線を愉しむ授業」を実施することになりました。これもご近所のお力によるものです。「音 楽は世界の話し言葉」だと感想を述べた留学生たちが、今度は自分たち出掛けて行って、地域館で交流会をしてくれることを願っています。

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