自分達で作り上げた「留学生の文化祭」

1ヶ月余りかけて準備してきた文化祭も、2月20日に大盛況のうちに終わりました。近所のお店の方も、地域館の館長さんも、お仕事の合間を縫って駆けつけてくださいました。常日頃「学生自身が自主的にやること」を大切にしたいと考えている私は、日本語の勉強になり、友だち作りが出来、思いっきり自己表現が出来る「学生の学生による学生のための文化祭」実施のために、次の3つのポイントを打ち出しました。

・出し物決定・準備など出来るだけ学生達で決めること
・出来るだけ学生の出番を多くすること
・結果ではなく、プロセスに意味があるような文化祭にすること

ご近所にポスター依頼

スピーチコンテスト

ミャンマーのタウンラさんのスピーチです

教師の「涙そうそう」

浦島太郎の劇をやってみました

韓国で人気の「ナンタ」に挑戦

文化祭を楽しむ留学生たち

劇「日本に来てからの私たち」

司会をする留学生

400人の学生に少しでも出場時間を多くあげるために、午前クラスと午後クラスに分けて2部制で実施することにしました。次に、必ずクラス代表スピーチ出場者1名を出すことを義務とし、劇や歌などは「やりたいクラス」がエントリーする形を取りました。

「みんなの文化祭だよ!」という教師の掛け声に、最初は戸惑っていた留学生達でしたが、
「みんなでポスター、作ろうよ。プログラムは?」
「作ったポスター、近所のお店に貼ってもらいに行こう。ぼくはパン屋さん、キムさんはさくら館に行って」
と、どんどん話が煮詰まっていきました。

授業が終わると、ロビーでメモ片手に司会者コンビの練習が始まります。屋上では先生方が合唱の練習をしています。教員室で仕事をしていると、2階からガタガタ音が聞こえてきます。一体どんな出し物なのでしょう?

そして迎えた本番です。第1部は、「必修科目のクラス対抗スピーチ大会」です。午前部は、ロシアのエカテリナさん「日本は危ない?」が1位となりました。午後は、初級と中級クラスの学生ですが、何と1位に選ばれたのは1月に来たばかりの初級クラスの韓国人学生イム・ソヨンさんでした。どんなに日本語の知識が不足していても、相手の心に訴えるスピーチが出来ることが証明されたのです。「私が幸せなわけ」というタイトルで始まったイムさんのスピーチは、10歳でアメリカ留学をした時の辛さ、寂しさ、人種差別の中で一生分の涙を使ってしまった話から始まりました。イムさんの前向きな姿勢に会場の心も一つになっていきました。

当日はたった10分足らずで終わってしまう劇も、それまで「何をするのか/誰がシナリオを書くのか/どうやって練習するのか/配役はどうするのか/衣装はどうするのか」といったことをみんなでワイワイガヤガヤ話しながら決め、練習するからこそ意味があるのです。まずは「参加するのかしないのか」から議論は始まりました。

こうやって教科書通りに進めるのではない「総合的な授業」の中にたくさんの宝物が潜んでいます。文化祭を通して留学生達はたくさんのことを学びました。

・クラスの仲間の良さを再認識した人
・近所の人達と知り合いになれた人
・国によって考え方が大きく違うことに気づいた人
・日本語で表現することの面白さを知った人……。

文化祭午前の部の最後は、【昔の少年少女合唱団】による「涙そうそう」でした。この合唱団のメンバーはイーストウエストの午前クラスの先生方です。新潟弁あり、関西弁あり、なんと種子島弁まで飛び出しました。方言の面白さを知ってもらいたいと趣向を凝らしたのですが、留学生達は「日本語なのに、日本語に聞こえない日本語があるんだ」とびっくりしていました。

日本語教師の仕事は大変です。授業だけではなく、入念な授業準備、授業後の採点に進学指導、ほとんど自分の時間はないと言っていいぐらいの激務です。そんな中で、先生方は時間をやりくりして練習を重ねてきました。私は、留学生、教師の「協働」に胸が熱くなりました。こうして卒業していく留学生達が日本語学校を通過点ではなく、「日本留学のオアシス」にしてくれることが私たち日本語学校教師全員の願いです。

来年は、「JanJan」の読者の皆さまもちょっとのぞいて見てくださいませんか。きっと留学生達は大喜びすることでしょう。

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