ある日、ご近所のムン(文)さんから、次のような提案が出されました。地元の方々と留学生との交流活動のパイプ役として活躍しているムンさんとのお付き合いは、もう20年近くになります。
「先生、『なでしこ会』のメンバーがいっしょうけんめい布巾を縫ったり、茶筒を作ったりしているんだけど、イーストウエストの先生方にも協力してもらえないかしら。もし気に入った作品があったら、買ってもらえません? もっと資金を貯めて、留学生のための支援活動をしたいし、『なでしこ作文コンテスト』もずっと続けていきたいし……」
「なでしこ会」や「なでしこ作文コンテスト」については、以前もコラムでご紹介いたしましたが、初めて目にする方々のために、ちょっと触れておきたいと思います。
・「布巾作り」でお年寄りボランティアと留学生が楽しく交流
・交流活動をテーマに「なでしこ作文コンテスト」
「なでしこ会」のメンバーは、70歳から85歳までのおばあちゃまたちで、毎週みんなで集まって布巾やランチョンマットを作っています。作品がたまるとそれを販売し、収益を区の国際交流活動や地域の留学生のための支援活動に使っているサークルです。その支援活動の1つが、「イーストウエスト日本語学校に通う留学生を対象にした『なでしこ作文コンテスト』」なのです。
私は、ムンさんの申し出を二つ返事でお引き受けしました。「なでしこ会」のボランティア活動には、当校の留学生もメンバーとして楽しく活動を続けていますし、毎年3月に実施することになっている「なでしこ作文コンテスト」は、おばあちゃま方の地道な活動があってこそ実現できるコンテストなのですから……。ムンさんは「じゃあ、どれだけ仕上げられるか分からないけど、来週作品を持ってきますね」と言いながら、帰っていかれました。
その1週間後、なんとムンさんは自転車にダンボールを積んでイーストウエストに見えたのです。「先生、おばあちゃま達、先生方が買ってくださるかもって言ったら、張り切って、せっせこせっせここんなに作ったんですよ」と言いながら、山のような作品を次から次へと机の上に出していきました。
布巾、手まり、ティッシュ入れ、茶筒、草履、携帯電話立て、お人形。和服の布地や余り布を使っての作品、色とりどりの和紙を使って作られた作品等など……。これだけの物を一週間という短期間で仕上げるには、どんなに大変だったことでしょう。夜遅くまで針仕事をしていらっしゃるおばあちゃま方の姿が目に浮かんできました。
先日、なでしこ会のおばあちゃま方に感謝の気持ちをお伝えする機会がありました。その時に言われた言葉を忘れることができません。
「お礼を言うのはこっちですよ。私たちこそ、留学生の皆さんに元気をもらっているんです。いろいろ話すのも楽しいし、新しいことがいっぱいでホントに面白いですよね。それに、コンテストで壇上から賞状を渡すような晴れがましい舞台は、女学校の卒業式以来ですよ。あの時は卒業証書をもらうほうですけどね。83歳にもなって、こんなことができるなんて、嬉しいですよ。もっともっと長生きしなくっちゃ!!」