これは、2009年3月にイーストウエスト日本語学校で実施された「なでしこ作文コンテスト」の入賞作品です。
投稿者 柳宗勲(韓国)イーストウエスト日本語学校
2009年3月21日投稿
日本に来る前の私は内気で少し自己中心的な、いわゆるマイペースな性格でした。人との付き合いにおいても自分と気が合う人だけと付き合い、相手に自分を合わせることなど面倒だと思っていました。
しかし、日本に来てしばらくしてから、少しずつ自分の性格が変わっていくことに気づきはじめました。来日して間もなかったころは心細さよりは、日本に触れてみたい、できるだけたくさんの経験をしてみたいという好奇心がもっと強かったのです。
しかし、日本人は遠慮がちな人が多いと聞いていたので、自分から積極的に相手に近づく必要がありました。人に接することが苦手だった私は、最初は当然ためらいもありましたが、みんな思った以上に優しくしてくれたので、私も少しずつ気を抜くようになりました。なにより、日本人と色々な話をしながらお互いの考えを共有することが楽しくて仕方がなかったと思います。いつしか笑うことも多くなり、もっとたくさんと仲良くなりたいと思うようになりました。
日本人と触れ合いながら色々と感じたことがありますが、その中でも「親しき仲にも礼儀あり」ということわざが一番記憶に残っています。私の国では、仲がよくなってお互いに気を許してしまうと、相手に対する態度が度を越えて自分の好きなようにしてしまいがちになります。
たとえば、約束の時間に少し遅れても大丈夫、友達の家に遊びに行ったときも別に遠慮することなしに気楽にすればいいといった具合です。(ご両親がいらっしゃったらまた話は違いますけれど…)。一概には言えませんが、たぶん友達同士で遠慮し合うことを却って水臭いと思うところもあるのではないでしょうか。私も「友達だから許してくれる。別に気にすることはない。」という風に考えていましたが、今は考え方がちょっと変わりました。
友達だからといっても最低限守るべきマナーが確かにあると思います。円満な人間関係のために「親しき仲にも礼儀あり」ということを常に心がけるべきだと思います。それからもう一つ、思いやり、いわば相手に気を使うという心が日本人はとても優れていると思います。相手を傷つけないための細かい言い回しによって感じ取り方が違ってくるので、言葉に気をつけなければならない、ということです。ともすれば、面倒だと思われかねませんし、実際に私自身もそう思っていたことがありますが、今思えば、間違っていたと思います。自分だけ頑張ればいい、自分と関係のない人のことなど気にしても何の得にもならない、というように思っていました。でも違ったのです。
いつかテレビで「人と人は関わっている、とんでもなく関わっている。仕事にしても自分がやりたいことだけをすればいいというものではない、押し付けられたことでも、いやなことでも、自分のやり方で遣り通すというのが大人だ」ということを聞いてどきっとしました。まるで「人はみんなと関わっているから気をつけなければならないのだ。細かい言い回しも本当は相手の気持ちを考えてこそできるものであり、自分を下げて相手を敬うことによって、角が取れた一人前の大人として評価されるのだ。」と、私にそう言い聞かせているように思えました。
今まで日本で生活しながらたくさんのことを学びましたが、これからももっとたくさんのことを学ぶことになると思います。今年4月からは東京から離れて山口大学で交換留学生として一年間勉強することになっているのですが、色々なできごとが目の前に現れることを期待しています。日本に来て少しは人間として成長したような気がします。本当に日本に来てよかったと思います。
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