木組みの家を前にして考えたこと(リンブルグにて)

リンブルグの街並み

リンブルグの街並み

今年3月、ドイツ教師会から依頼を受け、ヘレンベルグで3日間の教師研修を行いました。その帰り道、リンブルグに住むバックマンさんのお宅にお邪魔し、楽しい時間を過ごしました。彼女の家はリンブルグ駅から徒歩3分の所にある、重厚で、オシャレなマンション。そして、リンブルグという町は、木組みの家が立ち並ぶ、情緒あふれる地方都市。その街にじっと佇み、大聖堂や建物を眺めていると、何だか日頃の疲れが吹っ飛んでしまいました。

アチコチ傾いでいる建物で、商売をし、家族で住み、友達との語らいを楽しんでいる姿にまたまた感動。どう見ても、壁は左右でずれているし、床も高さが違うため、球を落とすと、コロコロと転がっていってしまいます。窓枠も歪んで見え、裏道では1階と2階では、隣家との隙間が異なります。

リンブルグの街並み(2)

リンブルグの街並み(2)

「ねえ、バックマンさん。こんなに右と左とずれてるのに、全然気にしないんだ」
「みんな古いことや、傾いでいることを楽しみながら、その中で生活してるのよ」
「潤いがあっていいわね~~~」
「そうそう、私は昔、あの家を買って小物を売る店を始めたかったのよね。彼が元気な頃のことだけど(その彼は、去年癌で亡くなりました)」

素敵な喫茶店でお茶を飲みながら、私は、4月から始める「アクラス日本語教育研究所」について話し始めました。

「ねえ、バックマンさん。今度作ったアクラスのオフィスって、駅から近くて便利なんだけど、古いマンションなのよ。築30年以上なの」
「えっ? 随分新しいのね。この家(バックマンさんの家)、いつ出来たと思う?」
「まあ、数十年前?」
「ううん。1892年」
「へええ、100年以上も経つんだ」
「まだまだ持つと思う。いろいろ工夫して使い込んでいこうと思ってる」

リンブグルの裏道1

リンブグルの裏道1

ちょっと古くなると建て替えてしまう日本人。私は大いに反省しました。もちろん何百年も持つ家にするには、建てる時から孫子の代まで持たせるという思いで、しっかりしたものを作る必要があるのですが、どうも日本人にはその思いが薄いようです。

リンブグルの裏道2

リンブグルの裏道2

 

 

 

日本にも古いものを大切にする心はあるのですが、どうも「自分達の生活の中で、身近な所で古いものを大切にする心」が欠けているように思えてなりません。そしてドイツで見た「魅力たっぷりの木組みの家」は、人の顔が一人一人違うように、どの家にも個性があり、年輪が感じられ、それでいて街並みとして調和が取れているのです。

リンブグルの木組みの家の街並は、「ちょっと日常生活を振り返ってみて」と、私に囁いているようでした。何だか日本人は「とっても大切なモノ」を忘れかけている気がしてなりません。木組みの家の写真を見ながら、ご一緒に考えてみませんか。

橋の上から見た大聖堂

橋の上から見た大聖堂

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