東中野にある「東京演劇集団:風」のご紹介 

「風」の工藤順子さん

「風」の工藤順子さん

東京・東中野に「東京演劇集団:風」という演劇集団があります。この劇団で活躍していらっしゃる工藤順子さんとは、2007年からのお付き合いです。当時私が勤務していたイーストウエスト日本語学校を訪ねてくださり、「ぜひ留学生にも日本の演劇を味わっていただきたい」と、たくさんのパンフレットを置いていってくださったのが、初めの出会いでした。それからずっと素敵な「ご近所付き合い」が続いているのです。

映画祭の時には、留学生を招待したいと、「年老いたブラウン」に30人もの留学生を無料招待してくださいました。小さな劇場いっぱいに広がる熱気、観客と演じる人とが一体となった感じが、今でも忘れられません。

「ヘカベ」の表面

「ヘカベ」の表面

その工藤さんが、「なぜヘカベ?」の公演案内を持って、今日アクラスに来て下さいました。長いおしゃべりの中から、工藤さんのこと、「風」という演劇集団のことを皆さまにご紹介したいという思いが沸き起こってきました。

では、まず「風」についてのご紹介を、「レパートリーシアター 思考する劇場 KAZE 2013 Summer」というパンフレットを基にしてお伝えしたいと思います。

♪   ♪   ♪

〈今、なぜ演劇なのか、今の時代、この社会において演劇の為すべきことは何であるか〉という問いとともに1987年、東京演劇集団風を創立。劇団の主な活動として〈レパートリーシステムによる劇場での上演〉〈海外交流〉〈青少年を対象とした全国巡回公演〉を行っています。

「ヘカベ」の裏面

「ヘカベ」の裏面

理念、形にとらわれることなく、自由な精神を持って「舞台と客席」の相互交渉のなかで演劇の本質を発見し、質の高い実践を行っていくことを目的に、1999年に拠点劇場“レパートリーシアターKAZE”を建設。劇団専属劇場の特色を活かし、20世紀を代表するドイツの亡命作家ベルトルト・ブレヒトや現代作家マテイ・ヴィスニユック(ルーマニア出身・パリ在住)などの新作・レパートリー作品を年間7~10本上演しています。併行して、“外に開かれた窓”として2003年から《ビエンナーレKAZE国際演劇祭》を開催。第5回を数えた2012年には「起・承・転・結 そして歴史へ」と題し、4作品を連続上演しました。

海外での招聘公演も増え、辻由美子がブライアン・マキャベラ作『ピカソの女たち~オルガ』で「第2回ガラ・スター国際演劇祭」(ルーマニア)グランプリを受賞したのは、その代表的な活動です。

また、青少年(高校生・中学生)を対象とした全国での巡回公演を年間150~170ステージ実施。「若い観客が芸術を鑑賞することは、単に作品を理解し小さな知識を得ることに留まらず、〈見る行為〉を通して自分にとって新しい何かを発見し、自分の感性を磨き、自分の存在に気付くこと。さらに作品を通してメッセージを創造し、自分を見つめ直す機会」という教育現場からの声とともに活動を続けています。・・・中略・・・。

未だ形を採らない豊かさを求めて―観客に対して自在に、そして舞台に対して意欲的に、取り組んでいきます。

♪   ♪   ♪

最後に、工藤さんの「声」をお伝えしたいと思います。
(お手紙の中から抜粋してお伝えすることを許可して頂きました)。

■「なぜヘカベ?」は、どんな作品なのでしょうか。

「なぜヘカベ?」の練習で

「なぜヘカベ?」の練習で

ギリシャとの戦争により、トロイアの王妃ヘカベは、街、人民を奪われ、そして19人の息子たちも殺されてしまう。しかしすべてを失ったヘカベの苦しみはそれだけでは終わらない。神々の私欲のなかで悲劇が繰り返されていく。いったい神々とは何者なのか。誰が望んでのことなのか。死の底から這い上がるようにヘカベは「なぜ」と問い続ける。

人間の業、腐敗してゆく社会、そのなかで人が生きる、生き続けようとするその力を客席と共に探してゆきたいと思います。

■工藤さんにとって演劇、劇団「風」とは?

昨年風は創立25周年を迎え、私自身も、「演劇」を生きる場として30年近く「風」でやってきました。「演劇」が、たとえ小さな声でも人が生きることの可能性を見出していく場であると信じて、これまでの経験にこだわらずに、ゼロ地点として、風をつくっていきたいと思っています

■中学校などで演劇公演をなさっていますが、生徒さん達の反応は?

生徒さん達は、演劇を通して、感じたことを自分の「生き方」にもつなげているのが分かります。彼らも、くじけそうになったり、悩んだりすることもあるのでしょうが、そうしたことを作品の中の人物と向き合うことで、見つめ直しているのだと思います。これからもこの活動を続けていきたいと思います。

カテゴリー: 日本語教育の現場から パーマリンク