留学生スピーチコンテスト入賞作品(午前部:中級/上級レベル)

解説:イーストウエスト日本語学校では毎年学内スピーチコンテストを実施しています。中野区のゼロホールを借り、午前部と午後部に分かれて行います。今年も体験に基づくその人にしかできないスピーチがたくさんありました。その中から、入賞作品を午前・午後に分けて紹介します。

【午前の部 入賞作品】
第1位  恥ずかしい? 恥ずかしくないよ    李京翰(リ キョウカン)
第2位  私が今伝えたいこと          高シエ(コウ シエ)
第3位  スナナレ               南讃祐(ナム チャンウ)
特別賞  お父さん    王玉婷(オウ イーティン)

留学生が作ったポスター

◆<午前部第1位> 恥ずかしい? 恥ずかしくないよ   李京翰(台湾)

私の初めての日本旅行はお笑い番組のようでした。そのときは、ひらがな、カタカナしか分からなかったので、言葉が全然通じなくて色々と変なことをしてしまいました。

怖いもの知らずの私と友達三人は成田空港に到着してから、人の後について行って、何の問題もなく東京に着きました。その時私たちは自分たちだけで日本を旅行するのはこんなに簡単なんだと思いました。

しかし、私たちは考えが甘かったです。順調だったのは最初だけでした。新宿駅の大きさは台北駅の五~十倍ぐらいなので、三人は駅で迷ってしまいました。そして出口も信じられないほど多いです。三人は駅の内を一時間ぐらい大暴走しました。大変疲れました。

そして、なんと友達は、普通の切符を入れるところにSUICAを入れてしまったのです。突然、改札口の機械から大きい音がしました。本人はもちろん周り人も驚いてしまいました。駅員が四人ぐらい来ました。不幸中の幸いだったのは親切な日本人がいたことです。その日本人は英語で通訳してくれて、とても助かりました。しかし、ほかにも日本料理屋で3万円分注文してしまたり、駅の前で待ち合わせた友達と会えなかったり、たくさんの失敗を重ねてしまいました。

それらの失敗から、私は日本語の勉強を始めました。今度は日本語をきちんと勉強して、絶対ハッピーで、楽に日本に旅行するつもりです。

”恥をかいても大丈夫、失敗の経験は人生のもっともいい先生だ”と思っています。悪いことは、いいことへのきっかけになります。

小さい頃から、母はいつも”恥ずかしいことをしても大丈夫よ”と言っていました。今、母の言葉の意味がよく分かります。台湾では「恥かしいことは自分の鏡だ」と言われています。鏡ですから、自分の悪い点もよくわかります。その悪い点をやり直せば、いつかは成功することができます。

もし、日本での恥ずかしい旅行経験がなければ、二度も日本に来なかったし、今、日本語を学んでいなかったと思います。私の人生もそのまま止まっていたでしょう。ですから、みなさん、失敗の経験は全然恥ずかしくないですよ!失敗を怖がらないでください。

地元の「和太鼓チーム」の演奏に留学生は感動!

◆<午前部第2位>私が今伝えたいこと    高シエ (中国)

皆さん、日本語は好きですか。それとも日本語で会話とかするのは怖いですか。よく友達から聞かれます。「どうしたら日本語が上手になれるの?」「日本人と話がしたいんだけど、間違うことが怖くてうまく話せません。どうしよう」

取っておきの手があります。それは「恋」です。言語と「恋」をするのです。私は今、日本語と「恋」をしています。実は、日本人の友達と話す時とか、買い物する時とか、言いたいことをどうやって表現したらいいのか分からない時が多いです。そういう時、私は自分の知っている範囲で、ほかの言い方を考えるとか体で表現するとか、いろいろな手段を使います。

言語は机の上で勉強するものではありません。その国の小学生は絶対他の国の研究生より言葉が上手だと私は思います。「それは常識だ」と皆さんは言うかもしれませんが、子供の学び方こそ一番いい方法ではないでしょうか。体に染み込ませて、なじませて、音という音から始めることこそ本当の言葉ではないでしょうか。

日本に来て、日本語学校に入って楽しい毎日を過ごしながら、さまざまなイベントに参加し、私は十分に留学生活を楽しむことができました。風の会、セルラスなど……。特にセルラス多言語文化広場では日本語以外にも韓国語、スペイン語など私の経験と同じように言葉とふれあいました。

その会に七歳と五歳の日本人の女の子たちがいます。その子らとはじめて会った時は、本当に驚きました。韓国語のロールプレイ会話がぺらぺら話せました。話を聞くと、3ヶ月くらいで話せるようになったそうです。どうやってそんなに早く話せるようになったのかと疑問を持っていましたが、その後私も同じ体験をしました。

たとえば韓国語の時、最初は簡単なロールプレイテープを何回もくりかえして聴きます。言葉のイントネーションやリズムを合わせてできるだけ真似します。次はゲームをやります。そのテープを聴く時、意味がわからなくても自分の聞こえた音だけ決めて手を挙げます。全員が決めてから一人一人の言葉を真似して、何回もゲームをします。そうすると自分の言葉のほかにみんなの言葉まで自然におぼえられます。

最後にもう一回テープを聴く時はぜんぜん違う感じがします。ゲームで使った言葉ははっきりと聴こえてきます。それまで全く別の言葉でしたが、この瞬間に私のそばにいるような親しみを感じられます。だんだんその言葉と「恋」に落ちるのです。

皆さんも試したらいかがでしょうか。言葉と「恋」をしましょう! このように何回もするうちにだんだん言葉とふれあいながら楽しみましょう。留学生活を!
ご清聴、ありがとうございました。

クラスの応援団も熱い!熱い!

◆<午前部第3位>スナナレ   南讃祐(韓国)

まず、始める前にスナナレの意味を説明させていただきます。スナナレというのは「素直になれなくて」の略です。実は東方神起のジェジュンが出演していたドラマのタイトルのパロディーです。ドラマに関する内容ではありませんが、この会場の日本の皆さん、そして学生の皆さんがこのスピーチをずっと覚えていてほしい、そして自分の気持ちに素直イになってほしいということでこのタイトルに決めました。

いわゆる日本人、そして私が日本に来て1年間経験した日本人はストレートな言い方をする韓国人とは違ってえんきょく的な話し方をしていました。わかりやすい例として、バイト先の友人に大事な用事ができて代わりに入ってくれないかと頼む時の会話を見せたいと思います。

A「明日、バイトのことだけど、俺出れなさそうだけど代わりに入ってくれない?」
B「どうして?何かあるの?」
A「実は明後日が試験なんで、明日ちょっと勉強しようと思ってさー」
B「うん。わかった。」
このようにすぐに用事を言ってから状況を説明する韓国人に比べ、日本人は
A「ねぇ~明日ねぇ~何か用事あるの?」
B「とくにないよ。どうした何かあるの?」
A「実はねぇ~明後日がねぇ~試験なんだけどねぇ~それがねぇ~すごく大事な試験だから明日勉強しないと本当に危ないんだ。」
B「あ!そうなの?それじゃ私が代りに入ろうか?」
A「本当に?ありがとう!」

そういうふうに状況を説明した後、話の最後に用事を言います。
どちらも長所と短所がありますが、まず、ストレートな言い方は話が早く進む、ストレスがたまらないなどの長所がありますが、それによる短所は冷たいという印象を与える、聞き手が傷つくかもしれないというのがあります。そしてえんきょく的な話し方は相手を配慮しているという良い印象を与える、状況を先に話すことで話がわかりやすいという長所を持っていますが、むしろ話が長くて結論がわかりずらい、言いたいことが結局言えなくてストレスが溜まるなどの短所を持っています。

まったく逆の性格を持つ二つの言い方なんですが、タイトルの「素直になる」つまり「スナナレ」ということはストレートで言いましょうとは少し異なります。そして、えんきょく的な話し方が悪いということでもないです。ただし、日本にストレートな言い方がなさすぎる、そして短所でもあった「話が長くて結論がわかりずらい」というのは聞き手が、「この人は何考えているんだろう」言いかえれば、「何か信用できない」と思ってしまうおそれがありますので少し問題があると思います。実際、来日して日本人ってこういうふうに言ってるけど、心の中ではどう思ってるんだろうと思った留学生の方もおおいはずです。

私はそのえんきょく的な話し方が自分より相手を配慮するやさしさから来たと思います。ですが、その配慮で自分がきずついたり、ストレスが溜まるのは決して良くないことだと思います。「シックスセンス」という私が読んでとても印象的だった心理学の本によると人をひきつける人間的な魅力は率直さから来ると書いています。

職場で言いたいことが言えなくて髪の毛が抜けているサラリーマンが急増している今の時代、好きでも好きとビシッと言えない草食系男性が増えている今の時代では自分の気持ちに素直になるというのはすごく大事な部分ではないでしょうか!
皆さん少しは「スナナレ」になりましょ!ありがとうございました。

1位になった李さん

◆<午前部特別賞>お父さん      王玉婷(台湾)

皆さん、こんにちは!私はM7の王イーティンと申します。今日は「お父さん」というテーマでお話しします。私が小さいころ、お父さんはすごく厳しい人でした。小学校の時、お父さんがいつも家庭教師のように宿題などを教えてくれました。でも、まだ子供でしたから、テレビが大好きでした。授業が終わって家に帰ったら、テレビを見たかったけど、「勉強しなさい」と言って見させてくれませんでした。だから、ちょっと頭にきて、私と妹はよくお父さんにいたずらをしました。例えば、お父さんのパンツをかくしたり、シャワーの時電気を消したり、お父さんが運動しているとき、頭の後ろをたたいて、逃げたりしていました。

きびしいお父さんだけど、やさしいお父さんでもありました。私のために、料理のことを一生懸命に勉強して、私によくおいしい料理をつくってくれたし、私が病気になったら、必死に看病してくれました。去年、日本に来たばかりのときに、お父さんが病気になりました。がんでした。毎日いつも泣きました。でも、お父さんは逆になぐさめてくれました。「人生なんて、はかないものだけど、自分の夢をあきらめないで」と、はげましてくれました。そのとき、お父さんがおくってくれた曲を歌います。
<中国語の歌>
日本語に通訳します。
私が最後に目を閉じる前に、愛してると言いたい。
あなたをまだあきらめたくない。まだ、もっとたくさんのことを言いたい。あなたのためにまだ全力を尽くしたい。今、別れたら、もう会えない。もうあなたのそばにいられない。でも、あなたは一生懸命生きていくことをわすれないでね。

お父さんは、私にとって一番大切な人です。お父さん、本当にどうもありがとう。
みなさん、あなたにとって、一番大切な人は誰ですか。大切な人を大事にしてください。
以上で、私のスピーチを終わらせていただきます。今まで聞いてくださってありがとうございました。M7の王イーティンでした。

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