留学生の俳句コンテスト、選者は地元の皆さん

短冊に俳句を書く留学生

イーストウエスト日本語学校では毎年各クラスで句会を実施し、さらに「イーストウエスト俳句コンテスト」(各クラスから1句ずつ代表句を出す)を行います。そして、選句はご近所の方々と、学校の先生方が担当です。ご近所に選句依頼を始めたのは4年前。選句用紙を持って訪れる家々で、いろいろな温かい声が聞かれます。日本語学校が「地域社会の一員」であることを改めて感じさせられる瞬間でもあります。

「1年って、早いねえ。もうその時期になったんだ」
「毎年、家族でみんな楽しみにしてるよ」
「私の選んだ句がどうなるか楽しみで……。絶対結果教えてくださいね」

今年の結果は次の通りです。

第1席   炎天下 憧れ抱き 甲子園    連国釣(台湾・男性)
第2席   夏の夜 花火が照らす 君の頬  余娟(中国・女性)
第3席   わがゆめも わがもくひょうも にじのよう 崔炫雅(韓国・女性)

第1席の連さんは、日本に来て初めて「甲子園での高校野球」のことを知りました。あの炎天下、一回負けたら終わりになってしまうのに、黙々と、勝利を目指して頑張る姿に感動したそうです。その時のことをどうしても俳句にしたかったと話してくれました。「特に今年の夏は暑かったから……」という連さんの言葉には、初めての日本での「暑~~~い夏」を過ごした体験から来る重みがありました。

第2席の余さんは、「この俳句の通りです。花火はきれいに空に輝いていたんですけど、ちょっと横を見たら、見ているみんなの顔も花火で輝いていました。ホントは隣に恋人がいたんじゃないんですけど、想像して「君の頬」にしました」と説明してくれました。

第3席の崔さんは、まだ初中級クラスの留学生です。知っている言葉を駆使して、一生懸命俳句を作りました。まだ来日して5ヶ月にしかならない崔さんは今、将来の夢に向かって元気いっぱい勉強しています。

あるお店に選句用紙を回収に行った時、そのお店のおばあちゃまとこんな会話を交わしました。
「みんな上手ですねえ」
「ありがとうございます。みんな真剣に作ってました」
「ねえ、これって、先生がたくさん言葉を並べて、それを組み合わせて俳句にしてるんですか」
「いえいえ。私たちは、季語を伝えるだけです。あとは、みんなウンウンうなりながら作ってました」
「自分で言葉を選んで……。留学生がそんなこと出来るんですね。日本人でも難しいのに、すごいですねえ」

ここにはどうやら「日本語は難しい」という考え方が根強く存在するようです。実は、来たばかりの初級レベルの留学生でも、知っている言葉でアレコレ考え、時には電子辞書を使って、「5・7・5」の世界一短い詩を作ることを楽しんでいるのです。

教室の壁に張られた学生の句

最後に、あるクラスでの俳句作りについてご紹介したいと思います。このクラスでは、始める前に教師が「俳句では、季語を入れることが大切です。でも、季語は1つだけ使ってください。それから、「うれしい、かなしい」っていう言葉で直接気持ちを表さないで、ある言葉からその気持ちが出るような句を作ってみてください」というアドバイスをしました。留学生たちは、授業中だけではなく、家で、通学時、ずっと考えていたそうです。さすがにこのクラスには、第2席になった余さんの句以外にも、良句がたくさんありました。

○ 彼を見て 私の心に 稲光
○ 蛍狩り 輝き放つ 道照らす
○ 鈴虫よ 心に響く 僕の友
○ 私呼ぶ 泡のささやき 生ビール
○ トンボ飛び 僕の心も 流れゆく

カテゴリー: 日本語教育の現場から パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>