『梅里雪山―十七人の友を探して』、文庫本に!

5年前出版された『梅里雪山―十七人の友を探して』がヤマケイ文庫の仲間入りをしました。著者小林尚礼(こばやしなおゆき)さんは、京都大学在学中に山岳部仲間の遭難事故にであい、捜索隊に加わります。大学院修了後は会社に勤めたものの、「最後の1人を発見できるまで遺体捜索を続けたい」と、会社を辞め専門学校に通い始めました。それは、「山の写真家」という第二の人生を選び、捜索活動に専念したいと考えたからでした。   

単行本 『梅里雪山』

単行本 『梅里雪山』

文庫本 『梅里雪山』

文庫本 『梅里雪山』

実は、『梅里雪山』が出た2006年の夏、私は偶然知人を通して小林さんと出会いました。『梅里雪山』をめくりながら彼と話を交わす中で、あるアイディアが沸いてきました。「そうだ、小林さんに<留学生のための特別授業>をお願いしよう!」

その時の特別授業について、『キムチと味噌汁(2007年、教育評論社)』より引用して、ご紹介しましょう。

    ◇    ◇     ◇    ◇    ◇

『キムチと味噌汁』pp.114-115
イーストウエスト日本語学校の授業の中で、小林尚礼さん(カメラマン)を題材にして、総合学習を始めました。1991年、チベットの梅里雪山の遭難で17人の人が亡くなるという大惨事があり、小林さんは3人の友人を失いました。

写真を見ながら説明する小林さん

写真を見ながら説明する小林さん

当時、京都大学山岳部に所属する大学生だった彼は、事故以来ずっと遺体の捜索活動を続けています。

遭難してから数年後には勤めていた会社も辞め、写真家に転身しました。「今追い求めたいものは何か」という自分自身への問いかけの中から、友達の捜索をしながら山の表情を撮り続けることが、自分の思いを表現する道だと決心したのです。

学生たちはまず小林さんが出演したNHKの『おはよう日本』を見て、生き方や環境問題についてディスカッションをしました。次にホームページを検索して、『梅里雪山―17人の友を探して』をみんなで読みました。そして講演会の日を迎えました。

小林さんと留学生とのやりとり(EW教師による板書)

小林さんと留学生とのやりとり(EW教師による板書)

小林さんの話に聞き入る留学生たち

小林さんの話に聞き入る留学生たち

 

「なぜ安定した生活を捨てて、遺体捜索に関わるのか」

「いくら夢を追い求めるといっても、それで生活が成り立つのか」

さまざまな留学生たちの質問に、小林さんは真剣に答えてくれました。

講演が終わると、その生き方に感動した留学生たちは彼に手紙を書き始めました。留学生にとってすばらしい出会いだったに違いありません。こんな出会いが、日本と外国との大きな架け橋への第一歩となり、世界へ広がっていくのでしょう。

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留学生の手紙に対する小林さんからのお返事は、今も大切に学校の壁に飾ってあります。

小林さんからの手紙

小林さんからの手紙

2009年11月にも特別授業をお願いしました。その時の記事は以下の通りです。
『「山の写真家」小林尚礼さんの生きかたに感銘、「進む勇気」をもらった留学生たち』

小林尚礼さんのホームページにはたくさんの素晴らしい写真が載っています。ぜひ皆さんもちょっと覗いてみてください。http://www.k2.dion.ne.jp/~bako/

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